エアレース開幕戦は惨敗でも、室屋義秀が「次は期待して」と言えるわけ
予選を終えたこの日、すでに日没から数時間が経過していた。レースエアポート内にある各チームのハンガー(格納庫)も、ほとんどが"店じまい"。昼間の慌ただしさが嘘のように静まり返るなか、一ヵ所だけ煌々(こうこう)と闇に光を放つ場所があった。
室屋義秀を擁する、チーム・ファルケンのハンガーである。
機体に不安を抱えたまま予選に臨んだ室屋 毎年恒例のUAE・アブダビで開幕戦を迎えた、レッドブルエアレース・ワールドチャンピオンシップ。2017年シーズンのスタートとなるレースで、室屋は思わぬ苦境に立たされていた。
室屋は昨季最終戦が終わり、このシーズンオフにエンジンの冷却システムの改良を行なった。ところが、それが思うように機能せず、室屋のエンジンはアブダビ到着以来、ずっと不調を訴えていた。予選が行なわれる日を迎えてもなお、状態は改善の兆しを一向にみせず、室屋の機体は著しくスピードに欠けていた。
予選の結果は10位。しかも、タイムではトップから2.5秒以上も後れをとっており、まったく勝負にならないお手上げ状態だった。
「エンジンが完全にオーバーヒートしている。なんか(原因は)よく分からないんだけど」
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