10年ぶりの下克上。非ワークスのジャック・ミラーがMotoGP初優勝

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira  竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 第8戦・オランダGPの舞台は、TTサーキット・アッセン。「ロードレースの大聖堂」と呼ばれ、他とは一線を画する特別な敬意が集まる会場だ。「ダッチTT」という呼称でレースが始まったのは1925年。第2次世界大戦中に何度かの中断を挟みながら、今年で86回目の大会を迎えた。グランプリカレンダーには初年度の1949年から組み込まれ、現在まで連綿と開催され続けている唯一の開催地である。

伝統の「ダッチTT」を制して初優勝を遂げたジャック・ミラー(中央)伝統の「ダッチTT」を制して初優勝を遂げたジャック・ミラー(中央) この会場周辺はまた、あっという間に気象状況が変化する「ダッチウェザー」の場所としてもよく知られている。移ろいやすい天候だけならまだしも、路面の乾きが早いために、そのコンディション変化がレース展開をいっそう複雑にする。今年のダッチTTも、決勝レースの天候と路面状況が勝負を左右する重要な要素になった。そして、その難しいコンディションを制して勝利をもぎ取ったのは、最高峰クラス2年目の21歳、ジャック・ミラー(エストレージャ・ガリシア0,0 Marc VDS/ホンダ)だった。

 ウェットコンディションで午後2時に始まった26周のレースは、激しく降りしきる雨のために15周目に赤旗が提示されて中断。レースディレクションがしばらく天候の状況を見極めた後、14周終了段階の順位でふたたびグリッドについて、残り12周のレースとして再開された。

 多くの選手が次々と転倒するなか、2位でチェッカーを受けたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は、「今日の2位は、勝ったも同然の結果」とレース後に話した。

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