0.019秒差でロレンソが「再々々逆転」。歴史に残るファイナルラップ (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira  竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ロレンソがわずかに先行する格好で、両選手は最終ラップの前半区間を駆け抜けていったが、コース上最高地点の5コーナーでマルケスがわずかな隙を突いて、ロレンソのインを差した。背後に回ったロレンソは、その後のセクションでマルケスを追う形になった。

「今日の決勝レースは、スタートを決めて最初からリズムよく走ることができた。予想していたほど速いペースの展開にならなかったので、逃げ切ることはできなかったが、マルケスがここまで速く安定しているとは思わなかった」

 レース後に、ロレンソはこの日の戦いをそんなふうに振り返った。

「マルケスが背後にいたから、先頭を維持するためにかなり気力・体力を消耗した。彼は体力を温存していたので、終盤に抜きにかかることができたのだろう」

 そして2台のマシンは、「ホンダ-ヤマハ」の順で最終区間へと向かっていく。

「このまま2位でもいいのかな、と思いながらマルケスの後ろにつけているとき、2005年の250cc時代に最終シケインで勝負を仕掛けて逆転優勝したことを思い出したんだ」と語るロレンソは、そのときの戦いを再現するかのようなバトルをマルケスに仕掛けた。ロレンソは左から右へ切り返すシケインの2個目で前に出たものの、次の最終コーナーでは乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負に出たマルケスがふたたびわずかに前に出て、2台は大きく下りながらコーナーを旋回していく。マルケスが前、ロレンソがその背後――。

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