【F1】マクラーレン・ホンダ、モナコGP8位入賞の舞台裏
34%――。モナコの街並みを縫うように走る全長3.34kmのモンテカルロ市街地サーキットで、ドライバーたちがスロットルペダルを全開にしていられる割合は、それだけしかない。あとは繊細にスロットルとブレーキのペダルを操作し、ステアリングと格闘している。スロットル全開率が60%を越えるサーキットが少なくないことを思えば、モナコGPがいかに特殊であるかということが分かる。
つまり、モナコではピークパワーの差はラップタイムに反映されにくい。熟成の途上にあるマクラーレン・ホンダにとって、上位進出のチャンスが十分にあるサーキットということだ。800馬力を超えるパワーユニットを背負って、78周にもわたって、ドライバーはあらゆるドライビングテクニックを駆使し続けなければならないのだから、ドライバビリティ(操縦性)が鍵になる。
伝統のモナコGPは、市街地コースで行なわれる 最大出力でメルセデスAMGやフェラーリに後れを取っているホンダのパワーユニットだが、ドライバビリティに関しては自信があった。ホンダの新井康久F1総責任者は、モナコの街並みを眺めながら語った。
「ここではエンジンを全開で使うことがあまりないですから、低速区間のスロットルに対する出力特性をきちんとまとめてきました。今回ハードウェア面では特に何も変えていませんが、ソフトウェア面は(前戦の)スペインGPのレースで得たものを受けてさらに変えて、相当良い方向に来ていると思います」
実はスペインGPのレース後、ジェンソン・バトンはマシンのフィーリングに対して非常に厳しい言葉を使って不満を述べていた。
「運転しているのが恐いくらいだった。マシンバランスとしてはアンダーステア(曲がりにくい状態)なのに、リアのグリップもなくてスロットルに触れるたびにホイールスピンをしてスナップする(不安定になる)んだ。僕の人生で最も恐いレースのひとつだった」
空力面でもパワーユニット面でも数々のアップデートを投入したスペインGPでは、フェルナンド・アロンソがリタイアするまで入賞圏を争う好走を見せたが、チームが新型パーツを使いこなせずにセットアップ面で迷走していたことも事実だった。
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