【F1】中国GP完走で前進も、ホンダ総責任者が喜べないワケ (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 マクラーレン・ホンダのライバルであるフォースインディアのあるエンジニアはそう証言する。メルセデスAMG製パワーユニットのカスタマーユーザーであるフォースインディアは、1発勝負予選ではパワーをベストの状態に切り替えて走ることでアドバンテージを得ている。だが、パワーユニットへの負荷を考えると、ロングランの決勝でそれを使うことはできない。そのためマクラーレンも、決勝ではフォースインディアら中団グループと互角に戦えるのではないかという期待が、わずかだがあった。

 とはいえ、新井は大きく状況が変わるとは思っていなかった。決勝で初入賞を期待することもできるのではないかと問い掛けると、かぶりを振った。

「淡い期待は抱かないでください。我々はまだ長い旅路のスタート地点に立ったばかりですから……。順位はどうあれ、まずは2台揃って完走することが最優先事項。そして、データを十分に収集しないと」

 アロンソもまた、中国GPでしっかりと走り込むことを望んでいた。2月のテストで負傷し、冬の間にほとんど走ることができなかったばかりか、開幕戦を欠場して、復帰戦マレーシアGPでは22周でリタイア。まだまだMP4-30を「手なずけた」とは言えないからだ。

 決勝レース中盤、アロンソは無線で訴えた。「オーバーステア(リアが不安定になる状態)が酷い! 金曜日に同じような問題はあった?」。レースエンジニアのマーク・テンプルからの返答は「NO」。空力セットアップが予想外の方向に影響を及ぼし、アロンソのマシンはバランスが悪化していた。それもこのマシンでの走行経験が少ないがゆえの事態だった。

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