2014.10.15

【F1】ロシアGPでリタイアした小林可夢偉の本音

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 実に年間300日が晴天に恵まれるというソチには、初めてのF1ロシアGP開催を迎えた週末も真っ青な快晴の空が広がっていた。しかし、ソチにやって来た小林可夢偉の心は晴れてはいなかった。

「なんでソチに来たんやろ? ここに来てからずっと考えてるんです、今でもね」

ロシアGPではリタイアに終わったケータハムの小林可夢偉 冬季オリンピックが開催されたメイン会場をサーキットとして利用し、オリンピックスタジアムやフィギュアスケートリンクなどさまざまな施設の間を駆け抜ける。初開催のロシアGPは、ドライバーたちからの評価も上々だった。

「まぁ、新しいサーキットやから、(今後のために)サーキットを見に来たくらいの気持ちで、と思ったのはありますよ。でも、ここに来てから『なんで来たんやろな?』ってずっと考えてます」

 可夢偉がそう言うのには、理由があった。

 土曜午前のFP-3(フリー走行)を前に、可夢偉がドライブするマシンのリアサスペンションに異変が起きていた。左側のアッパーアームだけが不格好に太く補強されている。金曜の走行でクラック(亀裂)が入ってしまったためだった。

 今のケータハムには交換するスペアパーツもなく、手持ちのパーツで走り続けるしかない。しかし、F1マシンのパーツというのは極限まで軽くするように設計されているため寿命が短く、特に安全面に直結する脚回りのパーツは「マイレージ制限」があり、走行距離が厳しく管理されているものだ。

「『もうちょっと走らせて』っていう感じやったけど、マイレージ制限があるからね。新しいサーキットで7周走っただけでオプションタイヤを履いてアタックっていうのはさすがに厳しいでしょ?(苦笑) そのアタックも2周しか走らせてくれないし。『ああ、こうやって走るんや!』って分かっていく途中で終わったから、お腹3分目でゴハンを取り上げられたみたいな気分ですね」

 予選までに可夢偉に許されたのは、金曜の27周、そして土曜午前の12周のみ。ちなみにメルセデスAMGのニコ・ロズベルグは予選までに84周を走破している。