総責任者に聞く。F1復帰するホンダは順調なのか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 今、世界のモータースポーツシーンでは、ホンダのF1復帰に対して期待と不安の両方が入り混じっている。2015年3月の来季F1開幕まであと半年。「ホンダの開発は順調に進んでいないのではないか」という噂が囁(ささや)かれ、一方で「初年度から驚異的な性能を発揮するのではないか」という脅威を抱いている関係者も少なくない。おそらく、かつて栄光を極めた時代と、大きな成功を収めることなく迷走のまま終わった2000年代の第3期活動の明暗の差がそうさせているのだろう。

「初年度からメルセデスAMGに勝てる」

 先日、新井のそんなコメントが世界中で報じられた。

「『開発は順調ですか?』って聞かれたから『いろいろありますがスケジュール通り進んでいます。(性能面でも)現状の各メーカーのレベルくらいには』という話はしました。でも、メルセデスAMGに勝つとか負けるという話は一切していないんです。『どこのメーカーもメルセデスAMGを目標にやっているだろうし、我々もそういうふうにやっていますよ』と話しただけなんですけど、あそこまで書かれてしまうのかという感じですね(苦笑)」

ホンダが公開したパワーユニットの画像ホンダが公開したパワーユニットの画像 新井自身、初年度から他を圧倒するようなパフォーマンスが発揮できるとは思っていない。F1はそんなに甘い世界ではない。それが、今年の開幕前のテストから度々現地に足を運び、自分の目で各メーカーの進歩を見てきた新井の実感だ。

 1月のテストでは走ることさえままならなかった今季のパワーユニットが、蓋を開けてみれば悠々とレースを走り切り、開幕から半年が過ぎた今では、メーカーごとの差もかなり接近してきている。同じパワーユニットを開発する技術者として「その進歩のスピードには舌を巻く」と新井は言う。同時に、今季のメルセデスAMGが誇っているパフォーマンスを目指すのは「当然だ」とも言う。

「今年苦しんできたメーカーが来年このままということはないでしょうし、実際に性能差は縮まってきています。来年に向けてどのメーカーもメルセデスAMGのパフォーマンスを基準に開発を進めているでしょうし、我々もメルセデスAMGを目標に開発していかないと勝負の土俵に上がれないと思っています」

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