【MotoGP】8戦8勝。マルケスが負けない本当の理由 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 たとえば、オランダGPでは、〈ダッチウェザー〉と言われるめまぐるしい天候の変化に悩まされることが多い。今回も、決勝直前ににわか雨が降ってスタートが遅れ、ウェット状態でレースが始まった。周回を重ねるごとに路面は少しずつ乾いてゆき、決勝中にピットインしてドライ用のスリックタイヤ(溝のないタイヤ)を装着したマシンへ乗り換える〈フラッグ・トゥ・フラッグ〉の展開になった。
 
優勝した昨年より、さらに圧倒的な強さを誇るマルケス優勝した昨年より、さらに圧倒的な強さを誇るマルケス そんな難しい状況のレースで、2番グリッドからスタートしたマルケスは序盤にあっさりと後続集団を引き離し、中盤周回以降は独走状態を築きあげてトップでチェッカーフラッグを受けた。

「今日のレースは、かなり落ち着いて走ることができた。フルドライならいいペースで行けることもわかっていたし、チャンピオンシップの脅威になる相手は背後を走っていたから(無理をしてペースを上げることはしなかった)。もしも前にいるのが直近のライバルなら、もっとプッシュして攻めていただろうね」

 このマルケスの言葉からは、年齢以上のしたたかさと冷静さ、そして並々ならぬ自信がうかがえる。

 そんなふうに落ち着いて決勝レースを戦うことができた理由を考えていくと、その要因のひとつは、金曜午後の予選でフロントロウを確保していたことにある。

 予選もまた、ダッチウェザーに翻弄されたセッションで、開始直前から雨がぱらつく微妙なコンディションになった。路面が完全に濡れてしまう前にタイムアタックできるかどうかで、明暗は大きく分かれる。そのチャンスは、予選開始直後の1周目しかなかった。

 コースインしたタイミングが重なったために、多くの選手がクリアラップをとれない状態で、マルケスもその中に埋もれていたが、一瞬の判断で周囲の選手を一気にオーバーテイクして集団から早々に脱け出し、単独アタックの環境を作って自己ベストタイムを記録。このわずかなタイミングを逃した選手たちは、時宜を逸して思うようなタイムアタックができなかった。フリー走行で速さを発揮していたロッシも、このチャンスをうまく捉えられず、4列目12番グリッドに沈んでしまった。

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