2014.06.18

【F1】フォースインディアの「企業秘密」を担う男・松崎淳

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「あと0.1秒縮めればDRS(※)が使える。ロズベルグを抜けるぞ!」
※Drag Reduction System:ダウンフォース抑制システム

 カナダGPのレース中盤にメルセデスAMG勢がトラブルに見舞われたとき、優勝にもっとも近い場所にいたのはフォースインディアのセルジオ・ペレスだった。

 彼らはメルセデスAMGから同じパワーユニットを供給されるカスタマーの立場とは言え、フェラーリとは違ってワークスチームに遠慮するような"オーダー"はない。MGU-K (運動エネルギー回生システム)のパワーを失い、ペースが鈍ったメルセデスAMGのニコ・ロズベルグを抜き去って優勝をかっさらおうとしていたのだ。フォースインディアは、チームメイトのニコ・ヒュルケンベルグも5位につけていた。

 2台ともに予選でQ2敗退に終わったフォースインディア勢が、どうして決勝でこれだけ急浮上したのか。その見違えるほどの速さの理由は、彼らのタイヤ戦略にあった。ほかのすべてのチームが2回のタイヤ交換を必要とした中で、フォースインディアの2台だけは一度のピットストップで走り切ったのだ。

 そのフォースインディアのタイヤ戦略を担うのが、松崎淳エンジニアだ。今回のレースも、かつてブリヂストンでチーフエンジニアを務めていた松崎の手腕が生かされていたことは言うまでもない。

松崎淳はブリヂストンがF1から撤退後、フォースインディアに加入した「1ストップというのは(タイヤの摩耗量からいって)ギリギリではありましたけど、データ上はできるという確信を持ってやっていました。最後は多少タレるとは思っていましたけど、レッドブルを抑え切れるくらいの範囲で収めることができると思っていました」

 レースを終えて、松崎はそう語った。

 今年のタイヤは硬く、どのチームも使いこなすのに苦労している。松崎も「(エンジニアとして)挑戦しがいのあるタイヤ」だと苦笑いする。

「企業秘密なのであまり具体的には言えませんけど、今年はタイヤの"使い方"にポイントがあるんです。誰でも全開で走ることは簡単ですが、ドライバーがその一歩手前で色々とコントロールしてくれているからこそ、タイヤがあれだけ保つんです。ロングランのデータから(限界点を)導き出すと同時に、その時のタイヤの状態に合せてスロットル操作とブレーキングをコントロールしてもらうということです。人間ですから、それは簡単なことではありません。でも、ドライバーはふたりとも非常に良いドライビングをしてくれています」