2014.06.11

【F1】独走メルセデスの牙城崩壊。カナダGPの舞台裏

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 表彰台の中央に立ったダニエル・リカルド(レッドブル)は、満面の笑みでガッツポーズをしながら、まだ自分がF1で初優勝を挙げたのだということを実感できないでいた。彼の初優勝への道は、カナダGP決勝70周、長いレースの残り5周を切ったところから突如として現れたのだから、当然のことだった。

開幕から続いていたメルセデスAMGの連勝を止めたのはレッドブルのリカルドだった サーキットのほとんどが直線と低速コーナーで構成されるカナダのモントリオールサーキットは、メルセデスAMG製パワーユニットのアドバンテージが最大限に生きる場所だった。

 案の定、ポールポジションを獲得したのはメルセデスAMGのニコ・ロズベルグだった。2位にはチームメイトのルイス・ハミルトン。ロズベルグの表情には、すでに勝利を手に入れたような安堵感が漂っていた。

「チーム内部では、予選が今週末のとても重要なキーポイントだと分かっていたんだ。明日のレースでは戦略上やれることがほとんどないし、僕とハミルトンは同じクルマで走っているから、コース上での差はほとんどないからね」

 ロズベルグとハミルトンは、この週末も自分たち2台が優勝争いを繰り広げると思っていた。硬すぎるタイヤは摩耗することなく、決勝レースは2台が同じように1度のピットストップで走り切るプランだった。だからこそ、予選でハミルトンの前に出たロズベルグは、勝利を手中にしたも同然だったのだ。

 だが、日曜日のモントリオールは暑くなり、路面温度は50度にも達しようとしていた。そのため、タイヤの摩耗は予想より速く進み、2ストップ作戦が必要になった。さらに、50周を迎えようかというところでメルセデスAMGのパワーユニットをトラブルが襲ったのだ。

「ブレーキをいたわれ、チームメイトがトラブルに見舞われた。まずは完走することが第一だ!」

 担当レースエンジニアがロズベルグに無線で伝える。

 MGU-K (運動エネルギー回生システム)の制御に不具合が生じ、パワーが失われただけでなく、リアブレーキからのエネルギー回生ができなくなった。そのせいでモーター駆動による制動力が失われ、ブレーキのみに頼ることになったのだ。その結果、ハミルトンはリアのブレーキを焼き付かせてリタイア。ロズベルグはすぐさまフロントブレーキを多用するように工夫することで難を逃れたが、ペースを大きく落とさざるを得なかった。