2014.05.30

F1の心臓部を扱う白幡勝広「たたき上げメカニック人生」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ヨーロッパの階級社会と同じように、F1の中にもホワイトカラーの「エンジニア」とブルーカラーの「メカニック」という明確な線引きがある。エンジニアがマシンに触れてオイルにまみれることはないし、メカニックがエンジニアリングを語ることもない。

 そして、メカニックの中にも階級がある。熟練のチーフメカニックの下で、2台のマシンそれぞれにナンバーワンメカニックがつき、その下に各エリア担当のメカニックたちがいる。

 バーレーンGPの直後に行なわれた2日間のテストで、白幡は夜間チームのナンバーワンメカニックを任じられた。レース期間とは異なり、テスト期間は夜間作業禁止規定がないので、テストプログラムを効率的にこなせるように夜間も作業を行なう。そのため、昼間のテストを担当する部隊とは別に、夜間の作業チームも投入される。ボッタス車担当チームがその夜間部隊を担い、そのチームを取り仕切るナンバーワンメカニックに白幡が抜擢されたのだ。

 白幡はもともと、東京工科専門学校の教師として、モータースポーツのメカニックを目指す学生たちを指導していた。そして、一念発起して、2003年にヨーロッパのチームでメカニックとして働く道を模索。8カ月間の努力の末、ベルギーのF3チームに就職した。彼が31歳の時のことだ。その2年後、ウイリアムズのテストチームのメカニックとして採用され、F1メカニックになるという夢を実現したのだ。

 レースチームに昇格した彼は、しばらくの間、手が足りない箇所をどこでもサポートするフローターという役割で研鑽を積み、自身のポジションを確立していった。そして今年、夜間チームとはいえナンバーワンメカニックのポジションを経験。着実に自身の立ち位置を高めつつある。

 2、3名のメカニックで1台のマシンを担当するがゆえに、さまざまな作業や対応力が要求される他のレースカテゴリーに比べて、自分の担当箇所だけを見るF1のメカニックは専門性が高く、図面通りに組み立てるだけで自由度がないと言われることもある。