【F1】パワーユニットの性能から読み解く「上位チームの勢力図」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ベッテルはシーズン開幕を迎える時点では「最初の何戦かは完走すらできないだろうと思っていた」と明かした。しかし灼熱のマレーシアで3位フィニッシュを果たしたように、「大きな進歩だし、自分たちのこの進歩の度合いには満足している」と語る。

 そんな中でフェラーリだけが上位争いから置いていかれた感がある。フィニッシュ後のパルクフェルメに立ち尽くしたアロンソの胸中には、そんな思いがあったのだろう。

 フェラーリのテクニカルディレクターのジェームズ・アリソンは「コーナリング、特に高速コーナーでの速さは我々の長所と言えるだろう。しかし、ブレーキング時のスタビリティ(安定性)とストレートスピードはもっと向上させる必要がある」と、PUの熟成不足が不振の理由であることを示唆している。加えて、フェラーリ製PUは他メーカーに比べて重く、重量面のハンディもあるとされている。

 開幕戦でも第2戦でも、トップから35秒遅れの4位フィニッシュ。しかし着実に前進はしているとアロンソは語る。

「開幕戦のメルボルンでは、レース中盤の22周目にセーフティカーが出たのにもかかわらず僕らは優勝したニコ(・ロズベルグ/メルセデスAMG)から35秒遅れだった。もしセーフティカーがなければ1分遅れになっていただろう。それが今回は、(セーフティカーがないレースで)35秒差だ。良い結果ではないけど、前進していることは事実だ」

 現時点ではメルセデスAMGが総合力で大きくリードし、レッドブルはPUの熟成不足によってそれに対抗できないでいる。他のメルセデスユーザーたちは、空力性能の開発が急務。そして、フェラーリはPUと車体の両面での熟成が必要とされている。

 だが、この勢力図が長く続くとは誰も思っていない。2014年の命運を握るのは、ここからの「開発力」だ。

「去年なら、マシンが95%完成された状態でシーズンに臨み、残り5%を引き出すことに集中していた。でも今年は、どのチームも6割程度の完成度で走り始めているはずだ。それだけ何もかもが新しいマシンなんだ。どのチームもいろんな箇所に進歩の余地を秘めている」(アロンソ)

 2戦連続優勝のメルセデスAMGの開幕スタートダッシュは確かに強力だった。しかし、その勢いをいつまで維持できるか。各チームはここからの逆襲を誓い、すでに5月のヨーロッパラウンドに向けて開発を加速させている。

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