【F1】可夢偉の復活は?来季シート争い最新情報 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ロータスは、アメリカの投資ファンド「クアンタム」から数百億円規模の莫大な資金を得る契約を結んでおり、それを元にチームの財政状況を立て直して、ライコネンの後任としてヒュルケンベルグを起用するつもりだった。しかし、10月中に支払われるはずだったその資金はまだ振り込まれておらず、このままではヒュルケンベルグの獲得を断念して、ほかのドライバーのスポンサー持ち込み資金に頼るしかなくなる。

 つまり、ロータスの来季の残り1席(もうひとつはグロージャンが残留)は、ヒュルケンベルグか、ベネズエラ企業の潤沢な資金がついてくるパストール・マルドナド(現ウイリアムズ)になる公算が高い。今後、クアンタムの資金がロータスに投入されれば、そのときマルドナドは資金を持ってフォースインディアかザウバーに行くことになるはずだ。

 このロータスの状況もあって、10月はしばらく膠着状態にあったF1のストーブリーグだったが、USGP直前に相次いで動きが出てきた。

 まず、ウイリアムズはフェラーリ離脱が決まっているフェリペ・マッサの獲得を決めた。マッサはマルドナドと同じニコラ・トッドがマネージャーを務めており、おそらくマルドナドとともにチームを離脱するPDVSA(ベネズエラ国営石油企業)からの違約金支払いを条件に、マッサと契約を交わしたものと思われる。同時に、マッサが持ち込むブラジル企業のスポンサー資金もあり、ウイリアムズは財政面の安定を選んだことになる。

 その一方で、マクラーレンはメキシコ人ドライバーのセルジオ・ペレスを放出し、自社育成ドライバーのケビン・マグヌッセンをデビューさせることを決めた(もうひとつのシートはジェンソン・バトンの残留が濃厚)。当初はメキシコの通信企業テルメックスの資金獲得を視野に入れて起用したペレスだったが、2015年からホンダとの提携が決まったマクラーレンは財政的不安がなくなり、実力重視でマグヌッセンの起用を決めたのだ。

 今季、「フォーミュラ・ルノー3.5」でチャンピオンを獲得したマグヌッセンは、まだ21歳だが、マクラーレンの英才教育を受けており、日常的にマクラーレンのファクトリーでシミュレーターをドライブしてF1マシンの開発に従事している。昨年と今年の若手ドライバーテストにも参加してF1マシンをドライブしており、レギュラードライバーと遜色ない走りを見せるなど、その実力は折り紙つきだ。

 マクラーレンが新人を起用するのは稀(まれ)で、ルイス・ハミルトン(現メルセデス)以来のこと。しかし、マグヌッセンはすでにチームの一員としてグランプリに帯同しており、着々とF1の世界で経験を積んでいる。チームは、彼の参戦初年度からの活躍に期待しているというより、2015年以降の「マクラーレン・ホンダ」体制に向けての育成を念頭に置いている。

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