【MotoGP】死角なし。「無敵のルーキー」マルケスが王座へ前進 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「朝のウォームアップで転倒したときは『ああ、今回のレースはもう終わったかな』と思ったけど、ドクターがとてもよい処置をしてくれた。そんなに悪い状態でもなさそうだったので、がんばってみようと思ったんだ。痛み止めの注射と飲み薬も服用したので、レース序盤は、痛みは問題にならなかったけれど、終盤になると疲れてしまって、肩の状態も厳しくなり、左から右への切り返しが特にきつかった。それでも、苦労しながらなんとかホルヘについていけた」

 そして、この日のレースで3位に入ったランキング2位のダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)との年間ポイント差については「チャンピオンシップでも、さらに4点の差を開くことができたのでうれしい」と話した。

 今回の第12戦を終えて、ランキング首位のマルケスとペドロサの差は30点、ペドロサと3番手のロレンソの間には9点の開きがある。マルケスはこれまで、ランキングやチャンピオンの可能性は気にせず、「毎戦全力で走りたい」と話し続けてきたが、婉曲な形ではあってもポイント差について言及したのはおそらく今回が初めてだ。

 そのことを指摘されると、「チャンピオンシップのことを、少しは考えている。今後も今までどおりに全力で走るけど、ヤマハとホルヘがとても強いコースでバトルを楽しめて、さらに20ポイントを獲れたのはチャンピオンシップにとって重要、というのは事実」と王座獲得を意識していることを認めた。

 このマルケスの優等生的発言について、今回のレースを4位で終えたロッシは「彼は、チャンピオンを獲るつもりで今シーズンの最初から戦っている」と指摘する。

「2000年、自分もルーキーだったけれども、この年にはチャンピオンを獲れなかった。理由は、初年度は無理だと自分で思いこんでいた、という部分も大きいと思う。しかし、マルケスはきっと、初年度から勝つつもりで走っている。正直なところ、自分の知るどんなモータースポーツでも、あんなルーキーは見たことがないよ」

 ただし、マルケス自身はチャンピオン獲得を意識して守りの走りをする可能性について、前戦チェコGPの際に言下に否定している。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る