【F1】カナダで快勝。レッドブルが手に入れた「勝利のカギ」
カナダGPの舞台となるジル・ビルヌーブ・サーキットは、モントリオールを流れるセントローレンス川に浮かぶ中洲に造成された公園の美しい景色に囲まれている。
だが、今年のモントリオールは初日から断続的に雨が降り続き、予選までサーキットは鉛色の空に包まれて陰鬱とした雰囲気が漂った。路面は雨に濡れ、各チームともドライコンディションで走り込むことができず、一抹の不安を抱えながら決勝のスタートを迎えることになった。
そんな中、ピットレーンの一番先頭にあるレッドブルのピットガレージには、このレースからチームに加入したエンジニアがひとりいた。
ザウバーからレッドブルに移籍したエンジニアのピエール・ヴァッシュ photo by Yoneya Mineoki 彼の名はピエール・ヴァッシェ。昨年までザウバーに在籍していた彼は、ミシュランでのキャリアを生かしてタイヤのマネジメントを一手に担っていた。タイヤ戦略を生かして何度も表彰台を獲得したザウバー躍進の裏には、彼の存在があったといっていい。
F1では現在、3つのチームが元ブリヂストンの経歴を持つタイヤ専任エンジニアを抱えている。いずれもF1タイヤの設計に携わっていた人物であり、その経験があれば他メーカーのタイヤといえども、その特性を理解するために「アドバンテージになる」と彼らは声を揃える。
その3チームとはフェラーリ、マクラーレン、フォースインディア。今季タイヤ面で強さを発揮しているチームばかりだ。コース上でのタイヤの使い方だけでなく、タイヤに優しいマシン開発の方向性を示すという点においても、タイヤ専任エンジニアは大きな役割を果たしている。
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