【F1】地元で快勝。アロンソが見せた「マシンを生かす」ドライビング (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 もしスタートでライコネンが予選順位(4位)をキープしてアロンソを後方に押さえ込めていれば、レース展開は違ったものになっていたかもしれない。それが分かっていたからこそ、アロンソはスタート直後に果敢に攻めた。

 オープニングラップでのポジションアップは、アロンソの大きな武器のひとつだ。今回のスペインGPのスタートでも、アロンソは1コーナーの飛び込みで冷静かつ大胆なドライビングを見せた。

 発進加速の良さで、いったんはベッテル(予選3位)のアウト側に並びかけたアロンソだったが、ベッテルも前のメルセデス勢2台のスリップストリームをうまく使ってスピードを伸ばし、なんとかポジションを守り切った。その間にライコネンにインを抑えられたと見るや、アロンソは1コーナーでの勝負を早々に打ち切り、その先のターン2、そしてターン3へと頭を切り換えた。

 ターン1でマシンをアウトに振って理想的なラインでターンイン。無理なラインをとったライコネンよりも立ち上がり加速で優位を得たアロンソは、あっという間にライコネンをオーバーテイクした。

 さらに、ターン1でタイヤをロックさせて加速が鈍っていたハミルトン(予選2位)を、ターン3のアウト側から一気に仕留めた。

「勝つためにはスタートで前の連中を抜かなきゃいけないことは分かっていた。スタート自体はすごく良かったが、(ターン1までの)コースはすごく狭くて動き回るスペースがなかった。だから、少しチャンスを待つことにして、ターン1の後で追い抜きをかけたんだ。ターン1でキミ(・ライコネン)とルイス(・ハミルトン)が少しワイドになっていたのを見て、アプローチを変えてターン2を綺麗に立ち上がることにしたんだ」

 ターン3でハミルトンを仕留めたときは、余力を残しておいたKERS(運動エネルギー回生システム。使えるのは1周で6.7秒まで)を使ったという。まさしく用意周到な作戦と冷静な判断力、そして大胆なドライビングによるアロンソの妙技だったのだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る