【F1】「自分の運を自ら生み出す」。最終戦でベッテルが見せた王者の貫祿

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

最終戦までもつれたチャンピオン争いを制したのはベッテル。史上最年少で3度目の王者となった最終戦までもつれたチャンピオン争いを制したのはベッテル。史上最年少で3度目の王者となった スタートからたった4つのコーナーを曲がったところで、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)のマシンが追突され向きを変えて止まった。

 ベッテルはこのブラジルGPで4位以内に入れば無条件でドライバーズランキングトップになり、タイトルが決まる。2位フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)とのポイント差は13。レッドブルのマシン性能をもってすれば、それは容易(たやす)いことのはずだった。事実、完璧なアタックが決められなかった予選でも4番グリッドを獲得している。

 しかし、1周目にして状況は激変した。ベッテルは追突され、奇跡的にリタイアを免れたものの、最後尾まで順位を落としてしまったのだ。対するチャンピオン争いの相手アロンソは5位まで浮上しており、逆転優勝の必要条件となる3位に手が届こうとしていた。ベッテルはこのままノーポイントの場合、逆転される。一転して窮地に立たされてしまった。

「ターン4に入っていったところで、後ろから大きな衝撃を受けたんだ。何が起きたのかわからなかった。フォーメーションラップの時から、ターン4は濡れていて滑りやすいことはわかっていた。でもブルーノ(・セナ)がおそらく誰かと争っていて、そのことを忘れていたのかもしれない」

 だが、ベッテルは決して慌てなかった。

「すべてがダメになる可能性もあった。想像してみてほしい。僕はターン4でスピンして反対方向を向いてしまった。たくさんのクルマが目の前に迫ってきたんだ。でも、目の前の状況に怒ったり苛立ったりするのではなく、僕らは信じ続けたんだ」

 雨を見越してウエットコンディション用のセットアップを施していたベッテルは、猛追を見せた。5周目に12位、7周目に8位、そして8周目にはなんと6位まで挽回。早くもタイトル決定条件を整えた。

 だが、コース上の破片処理のために入ったセーフティカー導入があけた30周目から、ベッテルのレースは再び厳しさを増していく。

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