【MotoGP】最後の勇姿。引退するケーシー・ストーナーとライバルたちの想い (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu


 しかし、そのような状態にもかかわらず、ストーナーの速さには誰ひとり近づくことができなかった。このレースウィークでは、地元出身のヒーローの最後の勇姿を見届けるべく、3日間総計で12万人超の観客が押し寄せた。

 また、今回のレースに先だち、フィリップアイランドサーキットの3コーナーには、<ストーナーコーナー>という名称が冠されることになった。ここはMotoGPマシンなら5速全開で飛び込んでゆき、バイクをぎりぎりの角度まで倒し込みながらハイスピードで駆け抜けてゆく場所で、ストーナーお気に入りの高速コーナーだ。

 それほど多くの人が自分を祝福してくれているという事実は、絶対に勝たなければならない、という決意をさらに揺るぎないものにしたようだ。

 2位のロレンソに9.223秒差という大差をつけてチェッカーを受けたものの、「レース中はずっと大きなプレッシャーがあって、ぜったいにミスをしちゃいけない、失敗できない、という思いが頭から離れなかった」とストーナーは27周のレースを振り返っている。

 また、「自分はもともと感情を露(あら)わにするほうではないし、そうするつもりもないけれど」と前置きをしたうえで「ウィニングラップでのグランドスタンドの大歓声が、それを代弁してくれていると思う」とレース後にこみあげてきた感情を、いつもの冷静な口調で話した。

「今年の勝利は、過去と比べても格別だった。特にレース最後の数周で皆が自分に向けて歓声を送ってくれる姿を見ると晴れやかな気持ちになった。本当に今日の観客は素晴らしかった。オーストラリア人としてとても誇らしく思うし、皆が(自分の勝利を)喜んでくれていることがうれしい」

 そして、こうも付け加えた。

「でも、ここでレースが終わるわけじゃない。自分はこのレースのために復帰したのではなく、シーズン終了までできるかぎり多くのレースを走るために復帰したのだから。もう一度いいリザルトを手にするために、最終戦のバレンシアに向かうんだ」

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