【MotoGP】最後の勇姿。引退するケーシー・ストーナーとライバルたちの想い

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

今季で引退するケーシー・ストーナー。地元オーストラリアのファンの前で見事に勝利した今季で引退するケーシー・ストーナー。地元オーストラリアのファンの前で見事に勝利した 誰もが予想したとおりの圧勝劇だった。フィリップアイランドサーキットで行なわれた第17戦オーストラリアGPは、2007年以来同地で連勝を重ねている地元出身のケーシー・ストーナー(レプソル・ホンダ・チーム)が制し、ホームグランプリ6連勝を達成した。

 2008年以降は毎年ポールポジションからスタートしている得意中の得意コースだけに、文字どおり他を寄せつけない彼の強さは、今回のレースウィークでもいかんなく発揮された。

 金曜午前のフリープラクティス1回目から決勝直前の日曜午前ウォームアップ走行に至るまで、全セッションでトップタイムを記録。そのいずれでも2番手タイムを0.5秒~1秒引き離す、ぬきんでた速さを披露した。

 このスピードには、チャンピオンシップをリードするホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)が「最初から予測できていたとはいえ、ケーシーはあまりに速すぎる。おそらく今回は彼に勝つのはムリ」と決勝前に事実上の白旗宣言をしたほどだ。

 ストーナー自身も、今回のレースは絶対に勝たなければならない一戦だった。

 今シーズンが始まって間もない5月に、ストーナーは今季限りでの現役引退を発表している。それ以降、すべてのレースが引退までの貴重なカウントダウンになった。ところが、8月の第11戦インディアナポリスGPで右足首を負傷。以後3戦の欠場を余儀なくされた。10月上旬の日本GPで完調ではないながら復帰を果たし、日本-マレーシア-オーストラリアと3週連続のレースを戦ってきた。

 復帰に際し、「こんな足の状態でバイクに乗ってレースをするのは正気の沙汰ではない、と医者に呆れられた」ともいう。今回のコースは、日本やマレーシアと比較するとレイアウト的に負傷箇所への負担が小さいとはいえ、それでも歩くときには明らかに足を引きずり気味であることがはっきりと見て取れた。

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