【MotoGP】苛酷なシーズン終盤。「三つ巴」復活で優勝争いはさらに複雑化? (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 このように、ポイント差だけを見るならば、ペドロサにとってハードルの高い状況は今も変わっていない。

 しかし、ここに、"ケーシー・ストーナーの復帰"という要素を足せば、ロレンソにとって有利な現在の状態は、やや不安定の度を増すようにも思える。

 ストーナーは、8月下旬の第11戦インディアナポリスGPで足を負傷。故国のオーストラリアに戻って手術を行ない、その後はレースを欠場して治療回復に専念してきた。レプソル・ホンダ・チームから復帰時期の正式発表はないものの、おそらく次戦の日本GPでレースに復帰するのではないか、というのが大方の予想だ。

 彼が戦列に戻れば、シーズン中盤までのようにふたたび<ロレンソvsペドロサvsストーナー>の三つ巴の争いが繰り広げられるのは必至だ。

 今季のここまでの争いは、彼ら3名のみが優勝を分けあってきた。マシン面の比較でも、今季のホンダとヤマハは互角の勝負を繰り広げている。勝利数で見ると、ホンダは8勝(ストーナー4、ペドロサ4)、ヤマハは6勝(すべてロレンソ)。コンストラクターズポイントでもホンダ312に対してヤマハ306、と両車はまったくの互角だ。

 もちろん、ストーナーが復帰するとペドロサが毎戦優勝できるとは限らないのと同様に、ロレンソにとって2位を確保できる保証もない。とはいえ、あくまで机上の計算を試みてみると、仮に今後3戦でペドロサが3連勝し、ストーナーが2位、ロレンソが3位、という結果に終わった場合、ペドロサとロレンソの点差は9ポイントずつ縮まっていく。最終戦を前に、両選手の点差が6点、という事態になれば、最終戦バレンシアGPは一気に緊迫の様相を呈するだろう。

 もちろん、ストーナーは2位に甘んじるような性格ではない。復帰した以上は、全力で勝ちを狙いに来るのは明らかだろう。ホンダも、伝統的にチームオーダーの発動をよしとしない気風がある。

 ペドロサ自身、今回のレース後には「ケーシーが復帰してきても、チームオーダーを頼るつもりはない」という主旨の発言をしている。いずれにせよ、明らかなのは、今後の4戦、とくに最終戦までの3連戦は、彼ら3名の誰が優勝しても不思議ではない、ということだ。

 ロレンソがチャンピオンへの最短距離にいることは疑いようがないものの、ほんのわずかの出来事で有利と不利の形勢は一気に逆転する不安定さをはらんでいる。ここから先の戦いは選手たちにとって苛酷な終盤戦だが、ファンにしてみれば最後まで手に汗握る争いを楽しめる贅沢なシーズンになりそうだ。

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