【MotoGP】来季移籍はほぼ決定!?ロッシが探し求める「最後の花道」 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu


 去就、といってもファクトリーチームにこだわる彼の行き先は事実上ふたつしかない。ドゥカティに残留するか、ヤマハへ戻るか。ヤマハファクトリーは、ホルヘ・ロレンソがすでに契約を更改しており、空きシートはひとつ。ドゥカティは、この第10戦まで2選手分のシートが未定で不安定な状態だったが、金曜にニッキー・ヘイデンの契約更改が発表された。ヘイデンは金曜午前のフリープラクティス1回目終了後、チームメイトのシートを埋める人物について、「バレンティーノに残ってほしいと思うよ。今までチームメイトとしてうまくやってきたからね。でも、どうなるかな」と話し、僕が決めるわけじゃないからね、と笑いながら発言していた。

 一方のロレンソは、ロッシのファクトリーチーム復帰の可能性という噂について、「もしそうなるなら、いつでも前向きに捉えたい。2008年から3年間、バレンティーノとチームメイトで非常に多くのことを学んで成長できた。また彼と一緒になるとしたら強力な組み合わせになるだろうし、ヤマハにとってもいいことだと思う」と歓迎する意向を示した。

 ドゥカティは、親会社となったアウディともどもロッシの慰留に懸命で、このレースウィークの土曜日にはCEOのガブリエレ・デル・トルキオ自らが直談判に臨むといわれていた。その際に用意した契約金額は1200万ユーロ(約11億5000万円)とも1500万ユーロ(約14億4000万円)とも噂されている。一方のヤマハは、その1/3程度だろう、と推測されていた。この場合、推定金額の正確さは重要ではない。要は、膨大な金額を提示しているドゥカティとそこそこの金額のヤマハのいずれかを選択した場合の、それぞれの意味、だ。

「今回の決断は、自分の選手生活を締めくくる場所を選ぶことになると思うので、非常に重要。だからこそ、決定するまでに時間がかかる」のだとロッシは話している。ドゥカティは、戦闘力の高いマシンを作り上げるために努力を重ねてきた。アウディが経営に参画し、資金面でも人材面でもその姿勢をさらに先鋭化させる予定だともいう。ロッシは彼等の熱意を積極的に評価する一方、「今までの試行錯誤で結果を出せていないのだから、これからわずかな時間で良くなるという保障はない」とも語っている。

 これに対して、ヤマハはロレンソがチャンピオン争いのトップを走り、サテライトチームの選手も常に上位につけていることを見ても、マシンポテンシャルが高いことは誰の目にも明らかだ。ロレンソとチームメイト時代の2008年から2010年は、互いに強烈なライバル意識を持ち、チーム内に一触即発の緊張感が張り詰めていたことは有名だが、しかし、今となってはそれも昔話だ。

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