【F1】可夢偉9位、ペレス3位。チームメイトとの差は何だったのか? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 2ストップの可夢偉は、タイヤ寿命の心配がない反面、ハイペースで飛ばしてピットストップ1回分のタイムを稼ぎ出す必要がある。しかしフォースインディアのマシンのペースが予想以上に遅く、12番グリッドから1ストップ作戦を狙うキミ・ライコネンにも先行されて抑えられてしまった。ここで本来の速さを発揮できなかったロスが痛かった。

 このままでは1ストップ勢に太刀打ちできないと踏んだ可夢偉は、途中で戦略を切り替えて1ストップでしのぎきる方針に切り替えた。しかし最初からそれを想定してハード側のタイヤでスタートしていたドライバーたちに比べれば、スーパーソフトでスタートした可夢偉のレースは理想的な戦略とは言えなかった。そのせいで、ペレスやライコネンなど1ストップ勢にポジションを奪われることになってしまった。

 1ストップ作戦を狙ったドライバーたちの中にも、そのギャンブルに敗れた者もいた。

 フェルナンド・アロンソやセバスチャン・ベッテルは、最後まで走り切れずにピットストップを余儀なくされたり、最後の数周でタイヤのグリップを失って表彰台圏外まで後退した。これによってロマン・グロージャンやペレスに表彰台が転がり込んだとも言えるのだ。

 加えて言うなら、コーナー数の少ないカナダのサーキットではタイム差が付きにくく、トップから10数台が数珠つなぎでレースを展開することになったことも影響した。そのせいで、ギャンブル成功のリターンは大きくなり、逆にギャンブルに敗れた者は失うものが大きかったからだ。

 実際のところ、レースが終わってみればトップのルイス・ハミルトンから9位の可夢偉までは24秒の差しかなかった。2ストップ作戦を成功させたのは首位を快走し続けたハミルトンだけで、他の2ストップ勢はタイトなタイム差の中でピットストップ1回分のアドバンテージを築き切れずに一様にポジションを落とすことになった。

 そう考えれば、2つポジションを上げて入賞圏を維持した可夢偉のレースは、まずまずの内容だったとすら言えるのだ。チームメイトの躍進さえなければ、ポイント獲得に満足できたごく普通のレース週末だったはずだ。

 可夢偉自身、レース後は意外にも明るい表情だった。

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