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【競馬】期待の若手女性騎手・古川奈穂 「ウマ女」中学生が極秘受験で競馬の世界へ飛び込むまで (3ページ目)

  • ハル飯田●文 text by Haru Iida

【競馬学校でイチから学ぶ】

 競馬学校では競馬の訓練やトレーニングだけでなく、馬房の清掃や飼い付け作業(馬のご飯)などもスケジュールに組み込まれており、生活のすべてが馬中心になる。高校では「いつもチャイムギリギリ」だったという古川にとって、全寮制で朝は5時半起床という生活リズムも含め、すべてが新鮮な環境。しかも周りは乗馬の経験者ばかりだった。

「同期はジュニアチームなどで小学生から乗馬経験があったり国体に出場していたりと、自分とは比べ物にならないくらい馬に触れてきた人たちばかりでした。私も高校を辞めてから入学までの半年間は競馬学校でイチから基本を教えてもらっていましたが、いざ一緒になってみるとその差をすごく感じました」

 同期との差を埋めようにも、細かく決められたスケジュールのなかではトレーニングや馬に乗れる時間は限られている。自然と訓練の量だけではなく質を求めるようになり、わずかな時間にもトレーニングを重ねながら、ストイックに自分のフィジカルやコンディションに向き合う、アスリートとしての考え方が身についていった。

「陸上競技の経験はあったんですが、友だちと楽しく部活動しながら自己ベストを目指すくらいの気持ちで関わっていたので、競馬学校のトレーニングは大変でしたね。とくに今まで必要としてこなかった上半身を鍛えるのはかなり大変でした。その分、下半身は強いほうだと言っていただけました。陸上では短距離も中長距離も走っていたので、いろんな体の使い方を学べていたのはよかったです」

 2年生になると厩舎での実習も増え、現役競走馬にまたがる機会も増えていく。当時から矢作芳人調教師の厩舎で経験を積んでおり、2018年に安田記念を制したGⅠ馬・モズアスコットにもまたがるなど、少しずつ騎手としての知識や感覚を養っていった。

「馬の特徴は感覚的なものなんですが、乗ったことのある人同士なら抽象的な表現でも伝わるんです。モズアスコットには一度だけ乗せていただいたんですが、背中で馬の偉大さを感じました。本当は人がリードしないといけないんですが、馬のほうがどっしりしていて私をリードしてくれていました(笑)」

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