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菊花賞を圧勝したドゥレッツァは、本当に天皇賞・春の最有力候補と言えるのか? (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

 ただし、同専門紙記者は続けて、こんな見解も示した。

「菊花賞の勝ち方が余りにも鮮やかだったので、この馬にはこの先のGI戦線での主役としての期待がかかっているかもしれませんが、あの菊花賞をよくよく分析すれば、この馬にそれほどの高い評価を与えていいものなのか。少なくとも2着馬との間に、3馬身半ほどの能力差はない、と見ています」

 同専門紙記者は、ドゥレッツァが菊花賞を制した最大の要因について「競馬がうまくいった」ことだと言う。

 確かにドゥレッツァは菊花賞の際、外枠からいち早く先行してハナに立ち、自分のペースに持ち込んだ。あとは、内ぴったりの経済コースを直線の勝負どころまで追走。そのまま余計なことは何もせず、レースの流れに乗ってゴール板をトップで駆け抜けた。

 長距離戦では、どれだけスムーズにレースの流れに乗れるかが大事とされる。それを、レースで一番うまく実践したのが、ドゥレッツァだったというわけだ。

 見方を変えれば、道中の位置取り、ペース判断等において、抜群の手腕を発揮した主戦のクリストフ・ルメール騎手の、いわゆる"ルメール・マジック"による勝利だったと言えるかもしれない。

 要するに、菊花賞で見せた圧勝劇は、いくつかのプラスアルファの要素があってのこと。2着以下との3馬身半差というのも、純粋な力量差ではなかった――より簡単に言えば、菊花賞での見た目ほど、ドゥレッツァが能力的に抜きん出ているわけではない、ということだ。

 気になることは、もうひとつある。"世代間の比較"である。

 今年に入って、「明け4歳世代は強くない」と言われるようになった。年明けの重賞戦線において、4歳世代がほとんど結果を出せていないからだ。

 皐月賞馬のソールオリエンス(牡4歳)や、ダービー馬のタスティエーラが振るわないことも、そうした声を助長させている。

 ソールオリエンスは皐月賞を制したあと、ダービーで2着、菊花賞でも3着と上位争いを演じるも、古馬との初対戦となったGI有馬記念(12月24日/中山・芝2500m)では8着と完敗。4歳になってからも、GII中山記念(2月25日/中山・芝1800m)で4着、GI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)でも7着に沈んだ。

 タスティエーラも、皐月賞で2着、ダービーで戴冠を遂げて菊花賞でも2着と奮闘するも、上の世代との対戦となる有馬記念で6着。明け4歳初戦の大阪杯では1番人気に支持されながら、11着と惨敗を喫した。

 こうした状況から、ドゥレッツァもこれら同世代に完勝したからといって、それほど高く評価していいのか、という疑問が生まれる。

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