天皇賞・秋に挑む3歳馬3頭の評価はいかに。古馬の壁を打ち破って頂点に立てるほどの存在なのか? (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 同馬は、府中での新馬戦を勝っているし、GIII共同通信杯(2月13日/東京・芝1800m)でも2着と好走。ダービーでの凡走は、コースよりも、2400mの距離にあったと思います。もともとノドに弱点のある馬ですから、2400mは長かったですね。

 しかし天皇賞・秋は、皐月賞と同じ2000m戦。ダービーからの距離短縮の恩恵を受けるのは、この馬が一番です。少なくとも、今回はダービーのような凡走はないと見ています」

 残るは、ダノンベルーガ。3頭のなかでは最も素質があると見られ、今回も上位人気が予想される。

 皐月賞4着、ダービー4着という実績は他の2頭に比べて物足りないが、それは春の段階での完成度を示すもの。もともとこの馬はトモに弱いところがあり、強い稽古ができないという弱点を抱えていた。この春の成績には、その弱みがもろに反映されたと見ていい。

 事実、ダービーで4着に敗れた際、主戦の川田将雅騎手は「現状では精一杯」と、敗因はあくまでも他馬との完成度の差だと話している。その悔しさを滲ませたコメントからは、"馬体がパンとすれば、こんなもんじゃない"といった、先々への強い期待も読みとれた。

 そこで見込まれるのは、ひと夏越しての成長だ。その辺りについて、ダノンベルーガは天皇賞・秋の1週前の追い切りで、ひとつの答えを示している。

 美浦トレセンのウッドコースで6ハロン79秒5-1ハロン11秒2という、当日の稽古の一番時計を叩き出した。ふだんは辛口で有名な堀宣行調教師も、「これでよくなってくる」と状態面のよさに加え、この夏の成長にお墨つきを与えた。

 前出の関係者によれば、「ダノンベルーガの陣営には、次のGIジャパンC(11月27日/東京・芝2400m)挑戦というプランもある」という。だが、現状では賞金不足で出られない可能性が高い。「ゆえに、この天皇賞・秋に勝負をかけてくれる。勝負度合いという点では、この馬が一番」と、同馬の台頭を関係者は示唆する。

 天皇賞・秋は、3歳馬(旧4歳馬)が出走できない時代があった。それが再び開放されたのが、1987年。以降、昨年までの間に3歳馬が勝利したのは、バブルガムフェロー、シンボリクリスエス、エフフォーリアのわずか3頭。天皇賞・秋は、3歳馬にとって高い壁だ。

 今年、注目を集める3歳馬3頭は、その壁を打ち破れるのか。世代間レベルを推し量るうえでも、この先のGI戦線を占ううえでも、見逃せない一戦となる。

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