秋華賞で牝馬三冠に挑むスターズオンアース。ライバル陣営が「つけ入る隙あり」と見ている2つの懸念 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Sankei Visual

 幸いケガの程度は軽く、骨片をとり出す手術もうまくいったという。術後の経過もよく、「順調に回復している」と伝えられている。

 実際、帰厩してからの調整も順調に進んでいるようだ。2週前の追い切りでは、「馬体が緩く、動きもピリッとしない」と不満を漏らしていた陣営が、主戦のクリストフ・ルメール騎手が騎乗した1週前の追い切りではかなりの好感触を得て、管理する高柳瑞樹調教師は「(本番までには)もう一段、上がる気がする」と、状態面のさらなる上昇への手応えを口にした。

 とはいえ、稽古はあくまでも稽古だ。稽古はよかったのに、本番でさっぱり、という例は競馬では事欠かない。馬の状態の善し悪しは、実際にレースで走ってみるまでわからない。

 つまり、スターズオンアースの状態面は本当に万全と言えるのか?――これが、ライバル陣営の言う「つけ入る隙」のひとつだ。

 さらに、ライバル陣営がスターズオンアースの最大の"アキレス腱"と見ているのが、モタれ癖だ。

 この懸念材料によって、クラシック前は再三足踏みを余儀なくされてきた。GI桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)の前、スターズオンアースは2戦目の未勝利勝ち以降、勝ちきれないレースが続いた。1勝クラス、GIII戦、GIII戦と、3着、2着、2着に終わっている。

 いずれも敗因は、モタれ癖が出たことだった。先述の専門紙記者が言う。

「最後の勝負どころで追い出すと、必ず右にヨレる。それで、真っ直ぐ走れなくて、その分、負ける。桜花賞前の3戦では、すべてそういう負け方でした」

 それでも、桜花賞では馬群を縫って快勝した。大舞台を迎えて、モタれ癖は解消されたのか? というと、そうではないらしい。専門紙記者がその点について解説する。

「桜花賞では最後の直線で馬群が固まって、スターズオンアースは一瞬、進路を失いかけました。でも、わずかな隙間をこじ開けるようにして、抜け出してきた。実はスターズオンアースにとって、このタイトな馬群が幸いした。

 馬群の隙間に入ったことで、モタれ癖を出すヒマがなかったわけです。その意味では、ラッキーな結果だったと言えます。もしあれがラッキーではなく、モタれ癖が解消されての結果だったとすれば、その時に手綱をとっていた川田将雅騎手が、次のオークスで乗り替わることはなかったと思います」

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