ウマ娘の人気キャラもいっぱい。天皇賞・秋で名馬たちが繰り広げた数々の極上ドラマ (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 次に思い出すのは、1997年の「女帝」エアグルーヴだ。ウマ娘では、美しく頭もいい、まさに完璧な存在として描かれており、作中でも「女帝」と呼ばれている。
 
 現役時代を知る人なら、そのキャラクター像も納得だろう。競走馬のエアグルーヴは、GⅠ馬の母ダイナカールから生まれた良血として、デビューからすばらしい成績を積み上げてきた。

 そんな女帝が快挙を成し遂げたのが、1997年の天皇賞・秋だ。今でこそ牝馬が一線級の牡馬にGⅠで勝つことは珍しくないが、当時、天皇賞のような牡牝混合GⅠで牝馬が勝利することはめったになかった。

 それを打ち破ったのがこの年。レースでは、前年の勝ち馬で1番人気のバブルガムフェローが先に抜け出すと、外から武豊とエアグルーヴが襲いかかる。馬体を並べた2頭は、ゴールまでの200mでデッドヒートを演じた。

 熱狂に沸くゴール前、実況アナウンサーの叫びが聞こえた。「バブルかエアか、バブルかエアか、エアグルーヴ!」ゴール前、エアグルーヴがねじ伏せるように前に出たのである。3着馬は、2頭からはるか5馬身も離れていた。

 牝馬の優勝は1980年以来17年ぶり。この事実が、成し遂げた快挙の大きさを物語っていた。

 エアグルーヴは、その後GⅠを勝つことはできなかったが、つねに牡馬一線級と互角の勝負を演じた。牡馬が圧倒的に強かったあの時代、エアグルーヴの走りはまさに「女帝」にふさわしかったのだ。

 その2年後、1999年のこの舞台でもドラマが生まれた。主役はスペシャルウィーク。武豊に初めてのダービータイトルをプレゼントした名馬である。

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