ディープインパクトの死で失われる「方程式」。その存在感は色褪せない (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 だがその一方で、ディープインパクトが不在であること、その意味の重大さを、今回の『セレクトセール』で強烈に思い知らされた。ディープ産駒が争うように求められた状況もその要因ではあるが、何より大きかったのは、その場で述べられた社台ファーム・吉田照哉代表の言葉だ。

 吉田代表は、日本競馬界は数年後、「ある方程式が通用しなくなる時代が来る」と言った。

 その方程式とは、「GIやクラシックを勝つ」ためには「ディープインパクトの子を買う」ということだ。

 たしかに、その"方程式"は厳然としてあった。

 それゆえ、馬産地ではディープインパクトの"種"が求められ、セリ市や牧場では「ディープの子」というだけで売れた。そして実際、そのディープの子たちが結果を出していった。

「だが、これからはそうはいかない」

 吉田代表はそう言った。続けて、こう語った。

「(これからは)どの種牡馬の子が走るかは、誰にもわからない」

"方程式"のあった時代を、混沌の中へと引きずり込む......。

 ディープインパクトとは、本当にすごい馬である。

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