エリザベス女王杯は3歳GI馬が優勢も本格化した4歳馬に逆転を期す
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
中央競馬は、今週のGIエリザベス女王杯(11月10日/京都・芝2200m)から年末のGIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)まで、8週連続のGI開催となります。
その先陣を切るエリザベス女王杯は、秋の"牝馬チャンピオン"を決める一戦です。以前は3歳牝馬三冠のひとつでしたが、GI秋華賞(京都・芝2000m)が創設されて、3歳牝馬と古馬牝馬の実力馬が集う「秋の女王決定戦」という位置づけとなりました。そして、そんな3歳牝馬と古馬牝馬の、世代間の対決が例年クローズアップされます。
ただ、ここ最近は時代が変わって、本当に強い牝馬は"牝馬限定戦"という枠にとらわれず、各々が思いどおりのローテーションを組んで、牡馬一線級が集うGI戦にも躊躇なく参戦するようになってきました。しかも、そこで人気となり、しっかりと結果を残しています。
今年で言えば、GI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)で圧倒的な強さを見せたアーモンドアイや、今春のGI宝塚記念(6月23日/阪神・芝2200m)に続いて、オーストラリアのGIコックスプレート(10月26日/オーストラリア・芝2040m)を制したリスグラシューらがそうです。
これらは、エリザベス女王杯には出走しません。そういう意味では、現在のエリザベス女王杯は現役最強の牝馬を決めるレースとは言い難いかもしれません。しかしその分、混戦模様になりやすく、近年は手に汗握るような展開がゴール前で繰り広げられているような印象があります。
実際、過去のレースを見返してみると、ここ5年間はクビ差の決着となっていました。さらに、5年連続でGI初戴冠の馬が勝利。やはり、絶対的な存在が出てこなくなっているからこそ、最後まで白熱したレースになりやすく、どの馬にもチャンスがある舞台になったと言えるかもしれません。
さて、エリザベス女王杯は今年も世代間の対決に注目が集まっていますが、その力差を比較してみると、今年は3歳世代の実力が出走予定の古馬の面々より、一枚も、二枚も上。おそらく、ラヴズオンリーユー(牝3歳)とクロノジェネシス(牝3歳)の、2頭の3歳GI馬による一騎討ちになるのではないか、と踏んでいます。
というのも、先にも触れたように、今年は4歳世代に限らず、現役でも最強と言えるアーモンドアイに、5歳牝馬のトップであるリスグラシューが不参加。加えて、今春のGIヴィクトリアマイル(5月12日/東京・芝1600m)の覇者であるノームコアや、海外のGI戦線を転戦しているディアドラ、GIIIクイーンS(7月28日/札幌・芝1800m)を勝ったミッキーチャームといった実力ある古馬勢が出走しないからです。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。