秋華賞に挑むダノンファンタジー。残り一冠獲得へ視界良好、油断なし

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 昨年末のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)を制して2歳女王となったダノンファンタジー。年が明けて、前哨戦のGIIチューリップ賞(3月2日/阪神・芝1600m)も快勝し、「クラシック最有力」と言われながら、本番のGI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)は4着、GIオークス(5月19日/東京・芝2400m)が5着と、やや期待外れの結果に終わった。

 距離適性も鑑みて、4番人気とさほど支持を得られなかったオークスは度外視できるとしても、単勝2.8倍の1番人気に支持された桜花賞で、馬券圏外の4着と敗れたのは、さすがに物足りなさを感じた。そして当時、「もしかすると、この馬、本当はそれほど強くないのでは......」という声さえ聞こえてきた。

 だが、この桜花賞の敗戦には、「ちゃんと理由がある」と関西の競馬専門紙記者は言う。

 その理由とは、余りにも順調に桜花賞を迎えてしまったことだ。

 普通は、本番を前にして順調に調整が進んだとすれば、これほどありがたいことはない。ただ、この馬には、逆にそれが災いしたという。

「桜花賞トライアルのチューリップ賞は、暮れの阪神JFから約3カ月の休み明けでした。もともとこの馬はテンションが高いタイプですからね、このレースを迎えるにあたっては、少なからぬ不安が陣営にはあったと思います。

 ところが、そのチューリップ賞を余裕残しの馬体で、まったく危なげない勝利を飾りました。今思えば、これが、よくなかった。本番への視界が良好すぎたんです。そこに、油断とは言いませんが、それに近い"隙"のようなものが生まれた。

 本番では、ライバルたちはもう一段ギアを上げてきます。この馬も、本当はそれに対応するために、もっと高いところを目指さなければいけなかった。でも、トライアルが余りにもうまくいきすぎたため、そこのところに、やや抜かりがあった。

 それと、4着という結果は、勝ったグランアレグリアが一枚抜けた能力を持っていて、その馬を負かしにいったから、でもあります。負かしにいかないで、普通の競馬をしていれば、2着はあったと思います」

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