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元ダービージョッキーは言う。
あの「評価ガタ落ちの1頭」は侮れない

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 前回も触れた「日本競馬の顔」とも言われる東京競馬場は、ファンのみなさんにとっても見応えのあるスケールの大きな競馬場だと思いますが、馬主さんや調教師、厩務員など、馬に携わる者にとっても特別な競馬場と言えます。レースに乗っている騎手も、大歓声が轟くなか、乗っている者にしかわからない感覚を味わうことができます。

 それが、日本ダービー(東京・芝2400m)となれば、より特別な舞台となり、騎手が味わう感覚も計り知れないものとなります。

 それこそ、騎手、調教師、生産者、馬主、そして厩舎スタッフ......すべてのホースマンの憧れであり、目標としている舞台――それが、日本ダービーだからです。しかも、競走馬にとっても一生に一度しかないチャンスゆえ、出走するだけでも意義のある、非常に価値のある大きなレースです。

 年末の有馬記念も"お祭り"のような盛り上がりを見せますが、日本ダービーはそれとも違います。"祭典"ではあるものの、他のGIとは違って、とりわけ競馬サークル内は、何かピリピリとした強い緊張感のある、異様な雰囲気に包まれます。当日の競馬場はもちろんのこと、週中のトレセンでも「ダービーならでは」という空気が流れています。

 そんなムードの中で出走馬に騎乗する騎手は、特に勝ち負けを意識できる馬に乗るともなれば、大きなプレッシャーを感じるものです。

 僕もサニーブライアン(1997年の優勝馬)とともに挑んだとき、パドックでサニーブライアンに跨った瞬間、足が震えたのを憶えています。自分では意識しないでいたつもりだったのですが、その特異な雰囲気に自然と飲まれてしまっていたんでしょうね。

 今年参戦する騎手を見ると、GIを勝っていないのは丸山元気騎手(アドマイヤアルバに騎乗)のみ。有力馬に騎乗しているのは、GIを勝っている騎手ばかりですから、そこまで雰囲気に飲み込まれてしまう心配はないでしょう。

 ただし、すでにダービーを勝っている騎手と、そうでない騎手とでは、"ゆとり"に差があると思います。やっぱり、誰もが一度は勝ちたいと思っている特別なレース。その分、一度でも勝っている騎手は、気持ちに余裕ができます。

 例えば勝負どころにおいて、内を突けば、ロスなく脚をためられるとします。ただし、その場合は詰まってしまうリスクも生じます。安全にいくなら、外を選ぶことになるでしょう。

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著者プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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