フランス競馬界で知らぬ者はない、小林智調教師が現地で開業するまで (6ページ目)

  • 小川由紀子●文 text by Ogawa Yukiko  photo by AFP/AFLO

――牧場時代に始まり、着実にしっかりと基礎を積み上げてから現在に至っている印象です。

小林 日本の牧場で5年やっただけでは、調教師をやれるだけのスキルは身につかないので。いまでもよかったなと思うのは、牧場時代の最初の頃、育成ではなくて繁殖をやっていたことです。調教師の中には馬がどうやって生まれるのかを知らない人も案外多いのですが、繁殖がどれだけ大変かなど全部を見られたことはよかったと思います。お産もすべてやったので。

 たしかに、改めて振り返ると、繁殖、育成、競走馬と、順番にやってきたことになりますね(笑)。

――実際に厩舎を立ち上げるには、どのような労力が必要になるのですか?

小林 調教師の免許が取れたら、会社を立ち上げる申請をして、自分の会社を作るわけです。厩舎は最初、デルザングルさんのところに間借りさせてもらっていました。何馬房かお借りして。

――馬の調達は?

小林 牧場時代にお世話になっていた製紙会社の社長さんが海外に持っている馬で、日本に送れない馬などを預けてくれたり......。

 でも、1年目は吉田照哉社長(現・社台ファーム代表)の馬、1頭だけでした。始めてみないとわからないことがたくさんあるので、いきなり10頭、20頭いたら馬主さんに迷惑をかけていたと思うので、少ない頭数から始めたことでかえって勉強できたと思います。

(つづく)

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