2017.08.16

あの天皇賞へ。札幌記念で思い出す、
ヘヴンリーロマンスの「ミラクル」

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 競走馬にとって、”休むこと”は大事なことだ。

 それは、単に疲れをとるとか、気分転換を図るというだけでなく、時に大きな”ミラクル”を起こすからだ。

「別馬のようによくなった」とは、競馬ではよく聞く言葉だが、それが聞かれるのはほとんどの場合、休養明けだ。その意味では、競走馬の休養は多分に戦略的と言えるかもしれない。

 はたして、ヘヴンリーロマンスにとっての5歳春から夏にかけての休養に”戦略的”な意図があったかどうかはわからない。だが、その後の”ミラクル”につながったという意味では、その休養が結果として戦略的な効果をもたらしたことは間違いない。

天皇賞・秋では牡馬一線級を退けたヘヴンリーロマンス(右)  ヘヴンリーロマンス――。

 今や、現役時代の戦績よりも、昨年のUAEダービーを制したラニ(牡4歳)や、ダート戦線で活躍するアウォーディー(牡7歳)の母として知られる。

 父サンデーサイレンス、母ファーストアクト、母父サドラーズウェルズ。いわゆる”サンデー牝馬”の1頭だが、母父の重い血が災いしてか、若い頃は”サンデー牝馬”の特長である鋭い切れ味が鳴りを潜めていた。

 未勝利を勝ち上がったのもダート戦だった。5歳の春に休養するまでの戦績は、28戦6勝、2着7回、3着3回、着外12回。追い込むもあと一歩足りない、つまり切れない馬だった。ゆえに、勝ち鞍よりも2着、3着のほうが多く、「サンデー牝馬らしからぬ」というのが、大方の評価だった。