【競馬】あえて天皇賞・秋を選んだサトノクラウンに勝機あり

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 秋の「古馬三冠」の第1弾となる天皇賞・秋(東京・芝2000m)が、11月1日に開催されます。伝統のGI戦で、八大競走()のひとつでもありますが、近年では「ここを使って、次が勝負」という使い方をする馬が増えてきました。
※桜花賞、皐月賞、オークス、ダービー、菊花賞の3歳クラシックと、古馬の天皇賞・春、秋、そして有馬記念の8つの競走は、GIレースの中でも特に格が高いものとされ、それらを総称して「八大競走」と呼ぶ。

 昨年も、上位人気の古馬勢、ジェンティルドンナをはじめ、フェノーメノ、エピファネイアらが、休養明けのぶっつけで参戦。何か、その後に行なわれるジャパンカップ(東京・芝2400m)の、トライアル戦のような雰囲気がありました。

 しかし、今年は有力馬の大半が、毎日王冠(10月11日/東京・芝1800m)、京都大賞典(10月12日/京都・芝2400m)といった前哨戦をステップに、この舞台に挑んできました。どの馬もここを目標にしてきたのでしょう。とすれば、伝統の一戦にふさわしい、熾烈な争いが期待できそうです。反面、予想するうえでは、難解なレースになりましたね。

 前哨戦を振り返ると、まずは毎日王冠を勝ったエイシンヒカリ(牡4歳)が、レースのカギを握る一頭と言えるでしょう。

 東京・芝1800mのコースは、ゲートを出たらすぐに左へ曲がる2コーナーが待っています。そのため、外枠であればあるほど、外に振られる不利を被る可能性がありますが、大外の8枠13番に入ったエイシンヒカリは、好スタートを決めると、あっという間に先頭に立ちました。馬と喧嘩することなく、流れるようにスタートを決めるあたりは、さすが名手・武豊騎手というほかありません。

 そして、レースのターニングポイントとなったのは、このあとでした。1000mの通過タイムが59秒9という、平均よりも遅いペースを作ったことです。開幕週のパンパンの馬場を考えれば、エイシンヒカリの逃げ切り濃厚な展開です。ここで、勝負は決した、と見ていいでしょう。

 もちろん、後続のジョッキーもそれはわかっていたと思います。しかし、1番人気の馬が逃げているときは、安易に競りかけることはできません。無理に仕掛けて、共倒れしてしまっては、元も子もありませんからね。まして、自らが勝ち負けを意識していれば、なおさらです。

 おそらく今回も、エイシンヒカリがハナを主張するでしょう。ポイントは、また毎日王冠のようなペースを作れるかどうかですが、今度はGIの舞台。前回同様の、楽な競馬はできないと思います。他の馬の仕掛けどころひとつで、結果は変わりそうですね。

 毎日王冠では直線に入ってからも余裕があったエイシンヒカリ。それに対して、最初に迫ったのは、イスラボニータ(牡4歳)でした。最終的には突き放されてしまいましたが、7カ月の休み明けを考えれば、上々の内容でしょう。3着に終わったとはいえ、いかにも本番で変わってきそうなレースぶりでした。1回レースを使ったことで息遣いも変わるはず。楽しみな存在です。ただ、枠順が少し外目になってしまったのは、残念です。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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