【競馬】天皇賞・春。本命キズナの調教師が語った「距離適性」 (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Nikkan sports

 キズナに対する信頼と、それゆえの一戦ごとの全力投球は、昨年も、今年も揺るぎがない。それは、指揮官の口調からも十二分に伝わってくる。だが、「まだ完全復活を果たしていない」という見方をする周囲と同じように、指揮官も何かしら不安を抱えているように感じた。すると、キズナに全幅の信頼を寄せる指揮官が、自問自答するかのように、ひとつだけポツリと懸念を漏らした。距離への適性だった。

「馬はものすごく良くなって、成長もしている。ただ、マイラーっぽくなっているというのかな……この馬の末脚の切れというのは、以前は徐々に加速していって、最後の100mでさらにグーッと伸びるイメージだった。それが今年の2戦は、一瞬だけ、超一流の爆発力を見せるような感じになっていた。大阪杯でも、坂を上がるときはすごい脚だったけど、上がり切ってからピタッと止まって、そこをラキシスにやられたように見えました。能力の高さは変わらないけれど、成長するに連れて、(馬の)タイプが変わってきているんじゃないかな、と。

(キズナは)持っている能力の絶対値が違う。それで、距離に対応できるように馬を作っていけば『ダービーも狙える』と思って、試行錯誤の結果、実際にダービーを勝つことができました。でも、もともとこの馬は、本質的にはマイルから2000mくらいがいいタイプと見ていました。最初に馬を見たときの印象もそうでした。そしてそのとおり、今では休みを挟んで体型がマッチョになって、当時のイメージに近づいてきている。競走馬としてのタイプが変わってきたな、という感じがします」

 ということは、今のキズナにとって、状態よりも距離がいちばんの課題ということなのだろうか。

「昨年も、勝負どころの動きを見ていて、『あれ? これは勝てないぞ』と思いました。後からレース中に骨折していたことがわかって、敗因をそこに求めましたが、あの動きの悪さは本当に骨折が理由だったのか、実は距離適性だったのか、正直わからない、というのが本音です」

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