【競馬】札幌記念ワンツー、悲願の凱旋門賞制覇へ視界よし! (2ページ目)
ゲートが開いて隊列が作られていく中で、最後方に陣取ったのはそこが定位置のハープスターではなく、ゴールドシップのほうだった。スタート直後は後方だったものの、最初のコーナーを迎える頃には好位までポジションを押し上げていた宝塚記念と異なり、今回はむしろ置かれ気味に追走する形となった。レースを見守る誰しもの脳裏をよぎったのは昨秋のジャパンカップで、馬群の後方を追走し、勝負どころで鞍上の内田博幸騎手がどれだけ叱咤しても最後まで闘志のスイッチが入らず15着に敗れた光景だ。前半1000メートルが58秒4というハイペースの影響もあったのだろうが、向こう正面では馬群の最後尾を追走するハープスターから5馬身ほど離され、鞍上の横山騎手が大きく1発ステッキを入れる姿がビジョンに映し出されると、場内はさらに騒然となった。
しかし、そのステッキが2強「だけ」のレースの始まりの合図でもあった。3コーナー手前でゴールドシップがハープスターににじり寄る。鼻面がハープスターの後ろ脚に並ぶと、何かのスイッチが入ったかのようにハープスターも馬群の外から進出を開始する。まるで2頭は他の12頭とは別のレースを走っているかのように駆け上がっていく。ロングスパートはゴールドシップの持ち味のひとつでもあるが、これまで末脚一手のハープスターが、相手のお株を奪うようなスパートで直線入り口でゴールドシップを従えて先頭に並ぶなど、誰が想像したであろうか。
先に抜け出したハープスター、追うゴールドシップ。じわじわとゴールドシップも差を詰めるが、ハープスターも最後まで脚勢が衰えることなく、3/4馬身差振り切ってゴールへと飛び込んだ。
試走としてはこれ以上ない内容といえるだろう。2頭ともに本番を先に見据え、決して目いっぱいに仕上げているわけでもないのにも関わらず、3着以下の12頭と完全に次元の異なる競馬をやってのけた。勝った川田将雅騎手も「得意とは思えない(小回りの)札幌で、目いっぱいの仕上げでもない中で、この結果を出せたのは嬉しい」と、そのパフォーマンスに満足気な表情を見せた。
何より驚かされたのがハープスターの新境地だ。これまでは頑なにコーナーで仕掛けることを避けてきたが、今回は「動いて」、さらに「結果を出せる」ことを示した。
「今回は『3コーナーから少しずつ動かしていい』という指示を(松田調教師から)いただいていたので、その通りに乗りました。向こう正面で、ゴールドシップの位置を確認しましたが、上がっていくときは(ゴールドシップに合わせたのではなく)ハープスターのリズムでいきました」
相手に合わせるのではなく、あくまで自身のリズムに忠実に動いてのレースぶりだっただけに収穫は大きい。
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