【競馬】「2強」に不安? 札幌記念でこそ気になる伏兵馬

ダービージョッキー
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 夏の北海道シリーズの大目玉、札幌記念(札幌・芝2000m)が8月24日に開催されます。レースのグレードはGIIですが、定量戦(負担重量が収得賞金に関係なく、馬の年齢と性別だけを基準に定められたもの)なことと、涼しい北海道での競馬ということで、毎年現役トップクラスの実績馬が出走。「夏のGI」とも言えるレースです。

 しかも今年は、GI5勝のゴールドシップ(牡5歳)に、桜花賞馬のハープスター(牝3歳)というスターホースが参戦。リニューアルされた札幌競馬場での2年ぶりの開催ということもあって、例年以上に盛り上がりそうですね。

 注目はもちろん、前述のゴールドシップとハープスター。人気も、この2頭に集中するでしょう。

 ただし、懸念材料がないわけではありません。2頭とも、凱旋門賞(10月5日/フランス・芝2400m)の前哨戦として位置づけている点です。本番前のひと叩きという意味では、確かに涼しい北海道での競馬は理想的ですが、札幌記念は距離も、コース形態も凱旋門賞とはまったく違います。そこで、本番を想定した競馬をするとなると、思わぬ落とし穴が待っていてもおかしくありません。

 まず、前走の宝塚記念(6月29日/阪神・芝2200m)を制したゴールドシップ。その際は、鞍上の横山典弘騎手の好騎乗によって完勝しましたが、ときに何の見せ場も作れず、凡走してしまうこともある馬です。

 その要因は主に精神的なもので、気持ち次第でまるで別馬のようになってしまうことがあります。ゆえに、ゴールドシップの鞍上を務める場合は、どれだけレースに集中させるか、馬の走る気を削(そ)がずにどうやってゴールまで導いてあげるかが、重要な課題となります。

 前走鞍上を務めた横山典騎手は、その課題を見事に克服しました。関東(美浦)所属にもかかわらず、ゴールドシップが所属する関西(栗東)にレース3週前の追い切り日から駆けつけて、自ら調教をつけていたのです。大きなレースになれば、馬と騎手の所属が東西に分かれていても、騎手が馬の所属先に行って最終追い切りに乗ることはよくありますが、3週続けて乗りに行くことなど、ほとんどありません。宝塚記念の結果は、そんな横山典騎手のゴールドシップにかける思いの強さが、まさに実を結んだものでした。

 その横山典騎手が今回もゴールドシップの手綱をとります。函館競馬場で調整中のゴールドシップにも、2週続けて追い切りで跨(またが)っていました。ならば、不安はないように映りますが、今度は宝塚記念とは状況が違います。前述したとおり、凱旋門賞の前哨戦というのが心配の種です。

 つまり、横山典騎手は今回、極端に馬群が固まるヨーロッパの競馬(凱旋門賞)を想定して、馬込みに入れる競馬をするかもしれません。以前、馬込みを嫌って敗れたことのあるゴールドシップにとって、それが懸念材料となります。そうすると、ゴールドシップの最大の課題である精神的な問題が露呈し、凡走する可能性があるわけです。

 もちろん、今ではブリンカー(視界の一部を遮ることによって、馬の意識を競走や調教に集中させる馬具)を着用していますし、いらぬ心配かもしれません。凱旋門賞のことを考えれば、私自身、そうした不安が杞憂(きゆう)に終わってくれることを祈っています。

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