【競馬】ディープブリランテが生後2カ月で上場された理由
『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第27回
2012年の日本ダービーを制したディープブリランテは、生まれたときから「素晴らしい馬体」の持ち主だったという。そして、同馬を生産したパカパカファーム代表のハリー・スウィーニィ氏は、生後まもなくして、同馬を2カ月後のセリ市に上場させることを決断した。5月生まれの仔馬を7月のセリに出すのは、異例だ。その判断の裏には、一体どんな理由があったのだろうか――。
人が近づいても気にすることなく、夢中で牧草を食べるパカパカファームの仔馬たち。 2009年5月8日の深夜2時半、パカパカファームの代表であるハリー・スウィーニィ氏と、フォーリングマネジャー(生産担当)の伊藤貴弘氏が見守る中で誕生したディープブリランテ。素晴らしい骨格を持ち、生後15分で立ち上がるほど豊富な体力を見せた同馬は、高い期待をスタッフに抱かせた。伊藤氏が当時を振り返る。
「ディープブリランテは、間違いなくセリ市で高い評価をされると思いました。たとえ『セレクトセール』に出しても、十分目立つほどのレベルだと。ただし、いくら素晴らしい馬体と言っても、あくまでディープブリランテは5月生まれ。サラブレッドでは"遅生まれ"の部類に入りますから、僕としては一年間ゆっくり育てて、翌年のセレクトセールに出すほうがいいと思っていました」
セレクトセールとは、日本競馬の生産界を代表する社台グループ主催のセリ市。毎年7月上旬に開催されており、その規模や注目度、上場馬の落札価格は国内トップクラス。したがって、各牧場の期待の仔馬たちが集まってくる。
この大規模なセリ市は、その年の春に生まれた当歳(0歳)馬のセッションと、1歳馬のセッションの2部構成で行なわれる。期待の繁殖牝馬ラヴアンドバブルズの子であり、素晴らしい馬体を持ったディープブリランテは、当然セレクトセールへの上場を検討された。
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