【競馬】最後のJCダート。エスポワールシチーが有終の美を飾る
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
第14回ジャパンカップダート(以下、JCダート)が、12月1日に開催されます。第1回が開催されたのは、2000年。舞台は、東京競馬場のダート2100mでした。それが、2008年の第9回から阪神競馬場のダート1800mで行なわれるようになりましたが、同舞台で開催されるのも今年が最後です。
来年からは、中京競馬場(ダート1800m)での施行となり、レース名も『チャンピオンズカップ』に変わります。過去には、クロフネの圧勝劇、カネヒキリの奇跡的な復活V、トランセンドの連覇など、数々の名シーンを生んできたJCダート。ファンの間でもかなり浸透してきていたと思うので、『ジャパンカップ』という名称がなくなってしまうのは、少し寂しいですね。
さて、『ジャパンカップ』として開催される最後のJCダートですが、小粒なメンバー構成だった先週のジャパンカップとは打って変わって、GI馬9頭という現役のダートトップホースが勢ぞろい。非常にレベルが高く、見応えのあるレースとなりそうです。
まず注目は、ホッコータルマエ(牡4歳)です。昨夏のレパードS(1着。2012年8月5日/新潟・ダート1800m)で頭角を現して、前回のJCダート(2012年12月2日)でも3歳馬ながら僅差の3着と健闘。今年に入ってからは、8戦6勝(2着1回、3着1回)という快進撃を見せています。
今年初戦の東海S(1月20日/中京・ダート1800m)では3着でした。しかし次走、地方の交流重賞・佐賀記念(2月11日/佐賀・ダート2000m)を制すると、交流GIの帝王賞(6月26日/大井・ダート2000m)まで5連勝を飾りました。その後、交流GIの南部杯(10月14日/盛岡・ダート1600m)では距離適性の差で2着に敗れたものの、続く交流GIのJBCクラシック(11月4日/金沢・ダート2100m)では再び圧勝劇を演じました。
この快進撃の間、アンタレスS(4月13日/阪神・ダート1800m)以外は地方競馬のレースなので、見ていないファンの方も多いかもしれませんが、勝利したレースはすべて危なげない内容です。
また、夏を越して、馬がさらにパワーアップした感があります。実際、前走のJBCクラシックでは、スタートからハナを主張して、そのまま逃げ切るという、今までにないパターンで快勝しました。そのレースぶりは、南部杯で捕まえ切れずに逃げ切りを許してしまったエスポワールシチー(牡8歳)の存在をかなり意識しているように思えました。「今回は、もう同じ負け方はしない」という関係者の意気込みが感じられましたね。
昨年の覇者ニホンピロアワーズ(牡6歳)も、気になる存在です。アンタレスSや帝王賞では、ホッコータルマエの後塵を拝していますが、その差は決定的なものではありませんでした。状態さえ良ければ、逆転があってもおかしくありません。
そもそも、昨年のJCダートの勝ち方は衝撃的でした。4番手の好位置から直線で抜け出して、2着ワンダーアキュートに3馬身半の差をつけるなど、強豪馬たちを完全にねじ伏せました。この秋、前哨戦を使えなかったのは誤算ですが、もともと久々を苦にするタイプではありません(休み明けは5戦2勝2着3回)。好メンバーがそろう一戦で、改めてその強さを披露してほしいものですね。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。