【競馬】福永祐一は、ダービージョッキーの称号を手にできるか
サニーブライアンに騎乗して第64回日本ダービーで栄冠を手にした大西直宏氏。ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
5月26日には、いよいよ日本ダービー(東京・芝2400m)が開催されます。
まずは、ダービーについて、少し話をしたいと思います。騎手、調教師、生産者、馬主、そして厩舎スタッフを含めた、すべてのホースマンの夢と言える日本ダービー。出走するだけでも大変なことで、当日は他のレースではあり得ない、独特の雰囲気に包まれます。キャリアの浅い若手騎手がそのムードにのまれて、自分の競馬がまったくできなかったということは、毎年のようにある話です。
その例としてよく取り上げられるのが、1998年にキングヘイローで挑んだ福永祐一騎手です。当時、福永騎手はまだデビュー3年目で、ダービーは初出場でした。騎乗するキングヘイローは、皐月賞2着で2番人気。勝機は十分にありました。その分、福永騎手は勝ち負けを意識して、相当舞い上がってしまったのでしょう。結果、キングヘイローはデビュー以来、初めて逃げて14着と大敗を喫しました。
競走馬というのは、とても敏感な生き物です。跨(またが)る者の精神状態などにも過敏に反応します。鞍上が過度に緊張していると、それが馬に伝わって、本来の走りができなくなってしまうことがあります。だからこそ、日本ダービーという大舞台では、場数を踏んだベテラン騎手か、すでにダービーを勝ったことのある騎手が好成績を挙げているのだと思います。
さて、今年の一冠目となる皐月賞を制したロゴタイプには、弱冠20歳のクリスチャン・デムーロ騎手が騎乗します。経験の少なさが懸念されますが、外国人騎手として初めて日本ダービーを勝っているミルコ・デムーロ騎手が兄であり、師匠という存在にあるそうです。兄ミルコ騎手から足りない面を補うだけのモノが得られれば、勝つ可能性は大いにあると思います。
そうは言っても、クリスチャン騎手には申し訳ないのですが、伝統の日本ダービーで、それも80回目を迎えるメモリアルレースですから、やはりこれまで何度も悔しい思いをしてきた日本人騎手に勝ってほしいところです。
なかでも、期待しているのは、前述の福永騎手です。福永騎手は、キングヘイローのあとにも、何頭かチャンスのありそうな馬でダービーに臨んできました。とりわけ、大きなチャンスだったのは、ワールドエースで挑んだ昨年でしょう。皐月賞では2着に終わったものの、ダービーでは1番人気に推されるほど、能力を買われていました。おそらく、福永騎手本人も「この馬で勝てなきゃ、もう勝てないのでは......」というほどの手応えがあったと思います。
しかし、そのワールドエースでも苦渋を味わいました(4着)。日本ダービーで1番人気の馬に乗ることは、それ自体すごいことですが、本人にしてみれば、相当なプレッシャーです。経験を積み重ねてきたトップジョッキーでも、人気に応えて勝つ、というのは難しいことなのです。
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