【木村和久連載】ゴルフコースの設計と円熟にまつわる「よもやま話」 (3ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 現に、コースレート(ゴルフ場の難易度を示す数値)って、10年に1回ぐらい算定し直しますが、開場40年も経つと、当初のコースレートが「72」だったら、「73」くらいにアップします。要は、難易度が増すのです。

 ただそうやって、木が勝手に成長したことで「バンザ~イ! うちのコースも難易度が上がって、名門の仲間入りだ!!」なんて喜んでいると、束の間、各方面からどんどん弊害が報告されてきます。

 樹木が茂りすぎてコース内に日陰が多くなり、グリーンの芝生が育たないとかね。冬場は、グリーンに日が当たらないと、カチカチのままで、プレーに支障をきたします。

 グリーンって、樹木に囲まれているわりには、日光もきちんと当てなきゃいけない。案外、そこが難しいところです。

 また、時間の経過とは恐ろしいもので、いつの間にか、設計家が目指した「本来のコースの姿から逸脱しているんじゃないの?」という意見も出てきます。

 たとえば茨城県にある、とある超名門コースでは、バンカーの上に松の枝が横からせり出して来ていて、せっかくバンカーから脱出できたと思ったら、ボールが松の枝に当たって、またバンカーなんてことがありました。

 ビジターで行くには面白いと思いましたし、それが"名物"になっているようでしたので、とやかく言いませんが、今はどうなっているんでしょうかねぇ......。ちょっと気になります。

 というわけで、開場50年を迎えるあたりになると、「そろそろ改造しますか」といった動きが出てきます。もちろん、予算がある場合の話ですよ。そこで、いろいろな意見が出て、さまざまな方向性に進んでいきます。

 そうすると、名門の多くは、新しい売れっ子の設計家にリニューアルを依頼して、近代的なコースへと変貌を遂げるほうに向かいがちです。

 その一方で、井上誠一のような名設計家によって造られたコースは、"文化遺産"的に、開業当時の設計思想に戻して、そのコース様式を後世に伝えていこうとする動きが出てきます。

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