渋野日向子に人を引きつける魔力。取材対応に見たコメント力と大物感 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 取材に応じているというより、世間話でもするように、ケラケラと笑いながら気さくに話す渋野だったが、なかでもトップアスリートの言葉として興味深かったのは、手が震えた瞬間について、である。

 プレッシャーで手が震えた瞬間とは、すなわち、自分の精神的な弱さが表に出た瞬間と言い換えてもいい。トップアスリートにとっては、ないに越したことはない経験だろう。そんな話題を堂々と口にできるのは、弱さを弱さとして認識したうえで、それを克服できる自信があるから。あるいは、少なくともそこから目を背けるのではなく、きちんと向き合うことができているからではないだろうか。アスリートが強くなっていくうえで、それは重要な資質ではないかと思う。

 しかも渋野の場合、悲壮感を漂わせるわけでもなく、それをあっけらかんと口にできる。そんな様子からも、肝のすわった大物然とした印象を受けるのだ。

 渋野がホールアウトした時点では、彼女の順位は3位タイ(最終順位は6位タイ)。このまま終われば、賞金ランクトップとの差が500万円くらいまで縮まる可能性があることを伝えられると、「そうなんですか? あら」と呑気な反応。傍らのスクリーンに映し出された上位選手のスコアにしばらく目をやると、「あー、がんばってよかったです。ハーフだけでも大事ですね」。報道陣が爆笑したのは言うまでもない。

 浅田真央、福原愛、吉田沙保里......。近年、人気女性アスリートの引退が相次いでいたスポーツ界に、新たなスター誕生である。

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