松山英樹、優勝。スピースも認めた「世界レベル」の勝負強さ (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji

 岩田は普段から慕っている東北福祉大出身の先輩だ。しかし、松山が表情を崩すことはなかった。プレーオフで対峙した岩田が、「いつもと違う勝負師の目をしていた」と口にすれば、松山は苦笑いでそのときの心境をこう振り返った。

「(岩田とは)ゴルフで優勝争いしたときに会うことがなかった。ちょっとでも隙を見せたら負けると思っていました。それで、(先輩に対して)態度が悪いと思われても仕方がないような対応だったかもしれませんが、それぐらいの気持ちがないと勝てなかったと思う」

 そうして、プレーオフでは岩田がミスを連発し、無難にパーをセーブした松山が勝利した。自身が契約するメーカーの主催大会で、期待に応えて頂点に立った。

「めちゃくちゃうれしい。最近、こんなにうれしかったことはない。本当によかった。ホストプロとして"勝たないとダメ"みたいな雰囲気もありましたしね(笑)。今大会は、こんなに4日間を集中して戦った経験がないというくらい、集中していました」

 今回、松山は米ツアーでしのぎを削る同世代のジョーダン・スピース(21歳/アメリカ)と4日間プレイした。ともに優勝争いを演じてゲームを引っ張り、ふたりは世界ランキング上位選手(スピース=14位、松山=20位。11月23日現在)として、まさしく"世界標準"のゴルフを、日本のファンに見せつけた。

 最終的に3位タイでフィニッシュしたスピースが言う。

「ヒデキは、勝負師の本能を持っている。この4日間で多くのことを学んだ」

 プレーオフを争った岩田と、同世代のライバルであるスピースが、ともに「勝負師」という言葉を使って、松山の強さを表現したのは興味深い。

 振り返れば、米ツアー初優勝を飾ったザ・メモリアル・トーナメント(5月29日~6月1日/オハイオ州)でも、松山はプレーオフを制している。勝負どころできっちりバーディーを奪って、プレーオフとなれば、しっかりそのチャンスをモノにする。今大会でも「勝負師」たるところを随所に見せた。

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