タイガー・ウッズ不在のマスターズに見た「新時代到来の予感」 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 初出場で初の優勝争い。20歳のルーキー、スピースが慌てふためくのは当然である。35歳のワトソンは、そんなスピースの感情の波に飲まれないように、自分のゲームに徹しようとした。後半は特に、武器である曲げるボールを駆使して、自身のゴルフを貫こうという姿勢が見られた。

 ワトソンは6歳~12歳くらいまで、自宅周辺で右回り、左回りと交互に回りながら、地面に描いた円の中にボールを入れるゴルフ遊びを毎日のようにしていた。そこには大きな木があって、遊びの中でも、それを避けてボールを打っていた。

「だから、僕は(ゴルフを始めて)最初から、曲げて打つことを覚えて、スライス、フックは自然に打てるようになった。そのうち、高い枝の上を打ったり、低い枝の下を打ったりして、近道することも覚えた」

 まさにワトソンは、その得意(?)の球筋で、随所に危険が待ち受けているオーガスタの後半戦を切り抜けていったのである。

 スイングは我流。感情の浮き沈みも激しい。圧倒的な飛距離があるとはいえ、アイアンの精度は今ひとつ。しかし、ショートゲームやパッティングには優れている。決して完璧ではないものの、ワトソンはマスターズ2度目の優勝を果たして、その強さが"本物"であることを世界に証明した。

 下積み時代からの仲間である、リッキー・ファウラーやベン・クレイン、ハンター・メイハンらと『ゴルフ・ボーイズ』というバンドを組んで、ややふざけたPGAツアーのPVを動画サイトで流しているワトソン。ちょっと破天荒な面はあるものの、前回のマスターズの前に養子縁組をした赤ちゃんが、2歳となって最終18番グリーンに登場。ふたりが優勝の喜びを分かち合うシーンに涙した人も少なくないのではないだろうか。それほど、印象的な光景だった。

 さて、タイガー・ウッズの欠場が"乱気流"を巻き起こしたのか、大荒れとなった今年のマスターズ。フィル・ミケルソンをはじめ、セルヒオ・ガルシア、ルーク・ドナルドら、世界ランキング上位選手が数多く予選落ちを喫した。松山英樹も、その乱気流に巻き込まれてしまったのか、絶不調。初日に80を叩いて姿を消した。

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