【ゴルフ】石川遼、米ツアー初勝利がはっきり見えた「価値ある2位」 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 田辺安啓(JJ)●撮影 photo by Yasuhiro JJ Tanabe

 米ツアー本格参戦1年目の先シーズン(2013年1月~9月)は、腰痛による練習不足がたたり、前半はショットが安定せず、中盤以降はミドルレンジのパットに苦しんだ。石川にとっての転機は、7月のカナディアンオープンだった。久しぶりに会った松山英樹と練習ラウンドをともにし、以降、全米プロ選手権(29位タイ)、ウィンダム選手権(26位タイ)では難なく予選を突破。2013−2014シーズンの出場権を争う下位ツアーとの入れ替え戦、ウェブドットコムツアー・ファイナルズ(4試合)では3試合でトップテン入りを果たした。

「先週、今週もそうでしたけど、英樹と(7月の)カナダで久しぶりにハーフを一緒に回って、そのあと全米プロ、ウィンダムでも一緒に回って、英樹と回れば回るほど、『オレもこいつみたいに強くならなきゃいけない』と思わされるんです」

 石川は松山から、何か特別なアドバイスをもらったわけではない。互いに健闘を誓い合うような熱い言葉を交わしたわけでもない。同い年のライバルが、同じ立場で同じ舞台を戦うその事実だけで、自然と刺激を受け、刺激を与えるような関係になっている。

「お互いにアドバイスするほど、余裕はないですよ。ちらっとパッティングに関して意見交換をするぐらい。一緒に回るだけですごく楽しい」

 シュライナーズホスピタルオープンで、石川の順位を押し上げたのは、ショットの安定感だった。標高約600mの高地、ラスベガスが舞台。普段よりボールがよく飛び、距離を合わせるのが難しい環境の中で、最終日はアイアンの距離間がピタリと合って、短い距離のバーディーチャンスが続いた。

 2008年のプロデビュー以来、石川はスイング改造を繰り返してきた。今年の1月にも、腰に負担をかけないスイングへの修正を行なったが、以来この10カ月は、ほとんどスイングを修正することはなかったという。

「クラブの軌道、ヘッドの軌道が安定してきたと思います。1月、2月は(腰痛の影響で)本当につらかったんですけど、その経験があったからこそ、この1年間は自分の体と向き合うことを覚えて、トレーニングの種類も増やしていた。自己管理ができているという面では、この1年で大きく変わりました」

 体調の不安が軽減され、ショットへの自信を深めているからこそ、今後の課題は明確となった。

「ゴルフでいちばん重要なのは、僕はパッティングだと思う。ゴルフというスポーツは、パッティングの占める割合が80%ぐらいで、あと15%ぐらいがメンタルで、残り5%がショットだと思っている。自分の中でパッティングは、ショットみたいにどんな状況でもリズムが崩れないという域には達していない。日本で平均パットが1位になったことはありましたけど、下手なものは下手なので......。これからは、パッティングが重点的にやっていくべきことだと思っています」

 だからこそ、石川は2位という結果に満足せず、日没が迫ったラスベガスのグリーンで居残り練習を行なったのだ。石川の視線の先にあるのは、米ツアー初優勝しかない。

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