【男子ゴルフ】石川遼、迷わず行け。アメリカ本格挑戦の機は熟している! (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

ジャンボ尾崎が
アメリカで勝てなかった理由

 特にメジャー大会におけるコース設定では、距離がしっかりあること、フェアウェー、グリーンともにアンジュレーションがあること、そしてティーグラウンドからグリーンに向かうほど狙いどころが狭くなっていること、この3点に重点が置かれている。そこで求められるショットの精度はより高度なものとなり、日本のツアーでは求められないような緻密な技術を持っていなければ、戦うことができない。

 前述したロングアイアンもそのひとつ。日本ではほとんど使用する機会はないものの、アメリカではロングアイアンで攻めなければいけないシーンが必ずある。それも、勝敗を分けるような重要な場面で訪れる。そこで、正確なショットを放つには、やはり実戦での経験がモノを言う。

 かつて、ジャンボ尾崎が全米オープンでトップ争いを演じたことがあった。しかし最終日、勝負どころの14番ホールで、尾崎はティーショットを右にプッシュアウトして優勝戦線から脱落した。その際に使用したクラブが、日本ではほとんど使っていない2番アイアンだった。実戦経験の乏しさが、明暗を分けた象徴的なシーンだった。

 競技は違うが、今季メジャー入りしたダルビッシュ有投手もいい例だ。日本でもずっとメジャーのボールを握り準備をしていたというが、現実にアメリカで投げてみると、滑るボールに違和感を覚え、対応に苦慮しているらしい。原因は、乾燥したアメリカと湿度の高い日本との気候の違い。同じボールでも日本で握るのとアメリカで握るのとでは、感触が違ったのだろう。

 もちろんここ数年、米ツアーにスポット参戦している石川は、それらすべてのことを認識していると思う。だがそれは、頭の中でイメージできているだけ。あらゆる状況で、体が自然に反応するまでには至っていない。日本で賞金王に輝くほどのレベルにあっても、アメリカで勝つために必要な経験値としてはまだ半分くらいでしかないのだ。

 だからこそ石川には、本当の意味でアメリカ仕様のスタイルを確立するために、シーズンを通して米ツアーに挑んでほしい。そこで、さまざまなことを体感し、吸収して、"世界"という舞台の真の姿を知ってもらいたい。そして、アメリカの環境に対応し、自然とプレイできるような感覚を体に沁み込ませてほしい。それが実現できなければ、世界で勝つための技術は身につけられないし、優勝という結果をつかむこともできないだろう。

 タイミング的にも、柔軟な思考を持っていて、吸収力のある、今がベストだ。年齢を重ねれば重ねるほど、環境の変化に対応できなくなり、いろいろな技術を身につけることも困難になる。特に、現代ゴルフの代表とされるマキロイのような、全身をバネのように使うスイングを実現するには、柔軟性が最も重要視される。インナーマッスルを強化し、肩の可動域を広げ、ヒザや足首、股関節などを柔らかくしなければならない。そうした柔軟性も、年をとるごとに失われていってしまう。

 何はともあれ、石川は着実に階段を上がってきて、いよいよ米ツアーに本格参戦というところまできた。まさに今、機は熟した。この絶好のチャンスを逃してはいけない。

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