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【ワールドカップ】イングランドを前に相手は最後に息切れする プレミアリーグの競争を勝ち抜いた戦士たちの強さ (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Kenji Nishibe

【新しい伝統】

 世界最高峰のプレミアリーグのスターを集めた代表チームにしては、華がない。

 選手がいないわけではなく、とくに他国が羨むくらい「10番」には人材がいた。W杯欧州予選の主力だったロジャーズにベリンガム、コール・パーマー、フィル・フォーデン、さらにエゼ。彼らを全員とはいわなくても、3~4人を同時起用すれば華々しいクリエイティブな攻撃ができたかもしれない。

 だが、トーマス・トゥヘル監督は堅実性をとった。フォーデンとパーマーは今大会招集せず、エゼとロジャーズもベンチに置いた。各ポジションに専門職を起用。それぞれが持ち場で力を発揮すれば、全体のバランスは崩れない。それぞれ対人能力が強く、戦術的にも慣れていて伝達コストもかからない。粛々と堅実にプレーしていれば、相手が崩れてくれる。

 予選全勝、22得点無失点だったのだから、変える必要がないと言えばそうなのだが、ドイツ人監督は変化や左右非対称を嫌うタイプではない。いくつかのオプションも試していた。

 ただ、結局のところイングランドらしさと、その強みを信頼したのではないかと思う。

 イングランド代表において現在のプレースタイルが定まったのは、1998年フランスW杯あたりだった。

 かつてはロングボール戦法が代名詞。ハイクロスと空中戦、ハードワークに激しいタックルの荒々しいスタイルで1920年代は無敵だった。

 それから徐々にサッカーの母国と他国との差は縮まり、決定的だったのが1953年にウェンブリースタジアムで初めて欧州のチームに敗れた「世紀の一戦」だ。ハンガリーに3-6の完敗。、それ以上に、技術と戦術における格差を痛感させられるトラウマ的な敗戦だった。

 欧州大陸に倣うべきか、それとも伝統のスタイルを貫くか。その間で揺れながらも1966年に自国開催したW杯で初優勝したが、栄光は続かずその後は予選敗退の屈辱も味わった。

 かつて無敵だった、テンポと強度を上げるイングランド方式は、すでに対戦国に免疫ができていた。GK、センターバックの大型化でイングランドのハイテンポをやりすごし、ボール保持によって体力を奪えば、終盤に必ず息切れする。強度の高さゆえの弱点を見抜かれていた。

 そうしたなかで転機は1998年フランスW杯で、ポール・スコールズ、デビッド・ベッカムなど技術の高い若手が台頭している。それに伴って戦術も世界標準化されていった。ただ、それ以上にイングランドを変えたのはたぶん資本力だ。プレミアリーグが設立され資本が流れ込んだ。外国籍選手に次いで外国籍監督が急増し、技術・戦術の進歩が加速している。

 プレミアリーグが世界最高峰のリーグとなり、選手もレベルアップした。その結果、形成されたイングランドの新しい伝統が堅実性だった。

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