【プレミアリーグ】リバプールがアジア市場を重視するワケ 近年の財務状況から読み解く (2ページ目)
【「日本ではフットボールへの本物のパッションが感じられた」】
同じくクラブの公式データによると、リバプールのファンはアジアに2億5000万人いるという。グッズの売り上げは、この域内が世界トップ。地球上に20ある公式ショップのうち、アジアには9もある。そして域内の公式サポータークラブは、実に48を数えるのだ。
アジアでの圧倒的な人気は、近年のリバプールの好ましい財務状況を生み出した大きな要因のひとつだ。過去10年で、彼らは商業収入を3倍に増やしている。2023-24シーズン、リバプールは史上最高となる3億800万ポンド(約616億円)の商業収入を得た。これは全体の総収入である6億1400万ポンド(約1229億円)の約半額だ。またプレミアリーグ時代では初めて、商業収入でマンチェスター・ユナイテッド(3億300万ポンド、約606億円)を抜いている。
グーグル・ピクセル(スマートフォン)、ペロトン(フィットネス機器)、UPS(ロジスティクス)、オリオン・イノベーション(IT)など、スポンサーには世界に名だたる企業がついているが、アジアマーケットの重要性はますます高まっている。
シャツの胸スポンサーであるスタンダード・チャータード銀行は、本社こそロンドンに構えているが、香港ドルの紙幣を発行しているように、アジアで広く知られている。またクラブ公式航空会社は日本航空(JAL)で、公式出版社は講談社と、日本企業がリバプールを支えている。そうしたアジア企業との繋がりの維持と強化のために、クラブは現在、日本、香港、シンガポールにスタッフを雇っている。
筆者がリバプールのビリー・ホーガンCEOに、2025年のプレシーズンツアーに香港と日本を選んだ理由を尋ねると、彼はこう答えた。
「クラブにとって重要なマーケットはどこか。毎年、それを話し合い、最高の機会を提供してくれる場所を探している。その結果だよ。何よりも大事なのは、きちんとしたトレーニング施設があることだ。チームはこの期間にフィットネスを高め、シーズンに備えなければならないのだから。そのほか、ツアー中に必要なさまざまな側面を精査したうえで、決断を下している。
香港も日本も、すべての要件を満たしている。どちらにも素晴らしい練習施設があり、香港でのACミラン戦も、日本での横浜F・マリノス戦も、スタジアムは満員になった。特に日本では、フットボールへの本物のパッションが感じられたよ。
商業的な観点に立っても、どちらも実に重要な地域と国だ。香港は我々のメインスポンサーであるスタンダード・チャータード銀行の生命線と言える地域であり、JALと講談社は日本企業だ。ピッチの内外で大きな成功を残せたアジアツアーだった」
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