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フィーゴ、ジダン、ロナウドに喝を入れ、会長にも物申す フェルナンド・イエロは正真正銘の「キャプテン」だった (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

 FWケヴィン・デイヴィスやMFケヴィン・ノーランなど曲者ぞろいのチームとはいえ、守備的MFとして異彩を放ったイエロの存在こそが、ボルトン躍進の最大要因だった。特にカバーリングは絶妙で、アーセナルの名伯楽アーセン・ベンゲルも「チャンスと思った瞬間に、あの男が現れる」と高く評価していた。

 シーズン終了後、ボルトン上層部は当然のように契約延長を打診した。しかし、イエロはすでに引退を決意していた。UEFAカップ出場権という置き土産を残し、彼は静かにピッチを去っていった。

【イエロは黙っちゃいなかった】

 イエロを語るうえで、レアル・マドリード時代はスルーできない。1989年から14年間、ある時は守備的MF、またある時はセンターバックとして尽力した。ビセンテ・デル・ボスケ、ホルヘ・バルダーノ、ファビオ・カペッロ、ユップ・ハインケス、フース・ヒディンクなど、この時代に監督を務めた名将たちはこぞって、イエロに絶大な信頼を置いていた。

 戦略・戦術に意見することもあったとはいえ、すべてレアル・マドリードに対する愛情があふれたからだ。だからこそマドリディスタが支持し、多くの主力がリスペクトしたのだろう。何しろ、あの「ロス・ガラクティコス(銀河系)」をまとめたのだ。

 ルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、そしてロナウド......。フロレンティーノ・ペレス会長は、次々とアタッカーを買い漁る。彼らの個性が華麗なハーモニーを奏でれば問題ないが、揃いも揃って守備意識が欠如していた。相手ボールになっても追わない。逆サイドで試合が展開されると休む。

 当然、守備陣の負担が重くなる。そうなれば、イエロも黙っちゃいない。フィーゴに、ジダンに、ロナウドに喝を入れる。スーパースターばかりの構成に委縮する若手をリードする。イバン・エルゲラ、クロドー・マケレレとともに前がかりすぎたロス・ガラクティコスのバランスを維持していたのが、イエロだった。

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