高井幸大のトッテナム移籍が「吉」の理由 新監督はコミュニケーション重視で人心掌握 (3ページ目)
【プレミア屈指のCBコンビ】
だからといって、新戦力の高井がすぐに頼られるわけではないだろう。推定約10億円のJリーグ史上最高額で獲得された「大器」だが、トッテナムの最終ラインは右からペドロ・ポロ、クリスティアン・ロメロ、ミッキー・ファン・デ・フェン、デスティニー・ウドジェと並ぶ。ケガがなければ間違いなくプレミア級。それでいてまだ平均年齢は24.5歳という4バックだ。
特に中央のふたりは、プレミアでも随一のCBコンビと呼べる。空中戦を含む対人の強さが際立つロメロと、対スペースで威力を発揮するスピードを持つファン・デ・フェンは、互いを補いながら「1+1」の答えを「2」以上にできる名コンビでもある。
27歳のロメロはアトレティコ・マドリード入りが噂されるが、流出の場合には、代わりに119億円近い高額の移籍金が入る見込みだ。加えて、今夏のトッテナムには、ロンドンのビッグクラブという従来のメリットだけではなく、チャンピオンズリーグ(CL)出場権というセールスポイントもある。いざとなれば、穴埋めに相応しい即戦力を獲得することはできるに違いない。
前述のとおり、単に守備的な監督というわけではないフランクのもとでは、CBに攻撃面での働きも求められる。高井は自らボールを持って上がる姿が当たり前だが、反面、後方でプレッシャーを受けながらのフィードや、中長距離のパスには磨きをかける必要があると思われる。その点、ロメロとファン・デ・フェンの両レギュラーは、長短のパス能力でも知られている。
ただし、練習からトップクラスのCBを手本に学びながら、国内カップ戦などでイングランドでの実戦経験を積むことは可能なはずだ。CLもある今季は、年間60試合未満が通例だった前ブレントフォード監督にとって、言わば未知の世界でもある。高井という成長期の見習い役は、持ち駒を拡充したい新監督自身も大歓迎に違いない。
もちろん、与えられた出場機会にミスを犯してしまうことはあり得るだろう。しかし、いきなり自信を落としかねないつまずきがあったとしても、移籍先の監督が人材を管理する手腕でも知られる事実は心強い。スポーツ心理学の心得もあるフランクは、コミュニケーションを大切にし、古巣で"マン・マネージャー"としても評価を高めてきた。
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